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  • 執筆者の写真みずき書林

『いかアサ』発売日!――Q&Aその2


前回の続き。



【Q2. どうしてネット書店ではすぐに発送されないの?】


まず、〈ネット書店〉などと漠然とした言い方をするのはむしろ礼を失しますし、一口にネット書店と言ってもそれぞれに細部は異なります。

以下では、イニシャルトークや隠語を使うのも煩わしいので、皆さんご存知、Amazonパイセンに特化して話を進めます。

また、以下は確証があるわけではなく、状況証拠に基づいた推論の部分も多く含まれます。


Amazonさんについては、謎のベールに包まれている部分も多いです。外資の超巨大企業ですから、取引先からのあらゆる質問に対して模範的な回答が用意されていますが、ぶっちゃけた本音まで明かされることはまずありません。

もっと言えば、Amazonの出版社向け説明会などに行くと、「小社はユーザーファーストであるからして、取引先とはいえ出版各社の皆さまよりも、利用者の利益と便利さを優先します」とはっきり言われます。僕は何度かそういう現場に言わせました。

ある意味では潔いといえば潔いし、割り切った評価すべき姿勢ではあります。



さて、「どうしてAmazonで注文したのにすぐに発送されないのか?」


これは、説明が難しい問題になります。

先にすごく簡略化して書いてしまうと、

・アイテム数が膨大過ぎてデータ登録に時間がかかる

・大型倉庫が全国にあるから、行きわたるまでに時間がかかる

・Amazonのステータスは、出版社サイドでは変更できない

というのがポイントだと思われます。



まず、本ができたら、Amazonと取引している取次店の担当者に、見本を提出します。

つまり、「こんな本ができたから、Amazonでも扱ってください」と言いにいくわけです。

この見本提出をしてから、実際にAmazonのサイトで「在庫あり」ステータスになるまでには、1週間から10日かかります。これはどんな本でも同じです。

これには上記のように、

・登録アイテムが膨大過ぎるために、データ登録に単純に時間がかかる。

という側面がまず考えられます。


詳細は省きますが、小社の場合は、

版元ドットコム(という本の総合情報サイト)でデータを登録

JPO(書誌情報の一元管理センター)にデータが転送される

JPOから、Amazonをはじめとするネット書店・ネットの大海に、データが拡散される


という流れでデータが広がっていくしくみです。

とはいえ、昨今はネット経由でかなり自動化されているので、データ登録にそこまで時間がかかるとは思えません。上記の情報が流れていく速度は、以前よりはかなり早くなった感触があります。

というわけで、データ登録そのものは、実際には改善されつつあります。



むしろ時間がかかり、それゆえに僕自身が大いに反省しなくてはいけないのが、

・大型倉庫が全国にあるから、行きわたるまでに時間がかかる

という点です。

つまり、実際のモノとしての本がスタンバイするまでに要する時間のことです。



Amazonの配達速度はこれ以上は難しいというレベルまで上がりつつあります。

翌日着は当たり前で、AMに注文したらPMに届く、というところまで来ています。


こういうことがなぜ可能かというと、Amazonは全国に倉庫を持っているからです。

Amazonの倉庫が超巨大なことはよく知られていますが、なにも一か所にすべての在庫を集中させているわけではありません。

ちょっといま裏を取らないで書いていますが、東京・大阪・九州・東北の4か所くらいに、拠点となる大型倉庫があるはずです。

そこに満遍なく在庫するからこそ、日本中どこにでもスピーディに届けることができます。


だから、いったんスタンバイしてしまえば、早い。

ただし、スタンバるまでには、それなりの時間がかかります。

見本提出を受けて、中央でデータを管理し、4か所および派生する倉庫に何冊ずつ在庫するかを決め、それらを実際に倉庫に入れ、注文が来たら即対応できるようにデータとモノを紐づけて把握する。

具体的にどのような管理作業が行われているのかはわかりませんが、ひとつずつのアイテムについてこれだけの下準備をすませる必要があります。

その準備が完了するまでには、1週間から10日かかります。



このタイムラグが、「書店にはあるのにネットにはない!」という状況を生んでしまいます。

これは前の本を出したときからの課題だったのですが、今回もそのコントロールに失敗したようです……。

ネットで予約いただいていた方々には、早めにお届けすることができず、たいへん申し訳ありませんでした。



つまり、見本提出から実際に販売になるまでに1週間から10日かかるとわかっているのだから、それを見越して動くべきだったのです。

『いかアサ』は4日に見本が出来ました。翌5日のAMには、Amazonと取引している取次店に見本を提出しました。そこから発売日の10日まで1週間足らず。ちょっとギリギリだな、と思わなくはありませんでした。

懸念のとおり、本日10日を迎えても、Amazonでは「在庫あり」ステータスに切り替わらず、「ネットで予約したけど来ない……」というtweetをいくつか目にすることになりました。

しかし4日より前に本を完成させることは日程的に不可能でしたので、このスケジュールが動ける最短でした。

書店発売とネット発売を合わせたければ、おそらく正解は、「発売日を後ろに倒す」しかありませんでした。

つまり、発売日を15日などに設定しておけば、1週間から10日のタイムラグが吸収でき、Amazonで在庫ありになるタイミングと書店発売のタイミングを合わせられたと思います。

しかしそれは、せっかく本ができているのに刊行そのものを遅らせることになるので、誰得なんだ……という思いもあり……。悩ましいところです。

とはいえ、タイムラグはまもなく解消され、ネット書店でご予約いただいている方には、数日内には到着するはずです。ご迷惑をおかけしてお詫び申し上げます。



こういう微調整を要するということはそもそもどういうことかというと、

・Amazonのステータスは、出版社サイドでは変更できない

ということがあります。

これも一概には言えませんので、あくまで「小社の場合は」という留保をつけておきます。

大手版元の場合は、自社でガンガンステータスを触れる、いわゆる最恵国待遇ということもありえるのかもしれません。

(かつてAmazonが日本に上陸したときにに「黒船来る!」という比喩が使われたものですが、その比喩に有力版元への最恵国待遇と、日本の慣例からの治外法権というニュアンスも込められていたのだとすれば、卓抜な比喩だったといわざるをえません)

ただ、みずき書林の場合は、(そして大半の出版社も似たような状況なのですが)手探りで関係を探り、その情報を似たような状況の版元同士でシェアしあうしかありません。

(ここにこういうことを書くのも、同じような試行錯誤をしている同業他社とアイデアをシェアしたいという思いがあります。こんなことまで書いちゃっていいのかという思いもありつつ)



さて、ステータスが直接コントロールできない以上は、間接的に何とかするしかないのですが、

『いかアサ』の場合、書店で発売開始した本日の夜24時の時点で、

「通常1~3か月以内に発送します。」←アーサー版

「通常1~2か月以内に発送します。」←ランスロットとガウェイン

というステータスです。

実際には、初回搬入分がすべて予約で売れていない限りは、こんなにお待たせすることはなく、もっと早く「在庫あり・通常発送」になるはずです。

もし万一、Amazonに入れた数すべてが予約でいっぱいになっている場合は、増刷ができるまではAmazonでは入手できません。

その場合は、増刷出来予定日の3/22以降になるまでは入手できないことになります。

ただし、(さすがに詳しい数が書けませんが)Amazonさんには3種それぞれ、3桁の数を搬入しています。いかに『いかアサ』が勢いがあり、皆様にご愛顧いただいているとはいえ、さすがにこの全数が予約で埋まったとは思えないのです。

であるならば、在庫ステータスは近日中(おそらく今週中)には「在庫あり」に切り替わるはずです。

あと数日お待ちください。

(もし数日たっても切り替わらない場合は、搬入分がすべて売れてマヂで増刷を待っていることになります)



やれやれ。

長いテキストになりました。

業界に関心がない人には退屈だし、これをまともに読む人はあまりいないのではなかろうかと思いますが、自身の頭の整理の意味も含めて、アップしておきます。

(なお、Amazonとの直取引である〈e宅〉についてはここでは割愛しています)


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