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  • 執筆者の写真みずき書林

『この世の景色』見本出来ました。


拝啓


早坂先生、たいへんご無沙汰をしております。

そちらはいかがでしょうか。


こちらでは、ここ数カ月、先生がこれまで書かれたエッセイから名品を集めた本を作っており、本日、見本が出来てまいりました。

明日にはお手元に届くと思いますので、ご高覧ください。


書名は『この世の景色』としました。

先生のエッセイ「紅く染った女遍路」のなかの一節、

「これが、私の最初に見たこの世の景色であった。そして、なんという幸福か。その後の人生で、これに優る美しいものはなかった」

から採らせていただいております。


装幀のイラストは、男鹿和雄さんです。先生の故郷の風景を描いてくださいました。

ご紹介くださったのは、先生もよくご存じの山内ビンさんです。

装幀デザインの宗利淳一さんはこの画を見て「早坂さんがあの世から見ているこの世の風景はこういう感じなんでしょうね」と言っていました。


私がこれを書いているいまは、ちょうどこの画のように日が暮れかかっている時間帯です。

先生は渥美清さんや石堂さんなんかと一緒に、こんな景色をご覧になっている頃でしょうか。

それとも、腕を後ろで組んで渋谷あたりの路地裏を歩きながら、道路工事の人やら猫やらを眺めていらっしゃる頃でしょうか。

もしかしたら、妹さんや英五郎さんと一緒に、広島にいらっしゃる頃かもしれません。


そうそう。

「はじめに」は桃井かおりさんで、「あとがき」は奥様です。

この配役は、さすがの先生も少しばかり驚かれているのではないでしょうか。

このふたつの文章を読みながら、大いに笑っている先生の顔が浮かびます。


というわけで、この世では先生の残された文章のまわりにいろんな人が集まって、本を作りました。

久しぶりに、ご自身が書かれた文章を読み直して、この世の景色を思い出していただければ幸いです。


取り急ぎご連絡申し上げます。

そちらでは病気もなくいつも健康で、もはやご自愛なさる必要もないのかもしれませんが、それでもくれぐれもご自愛ください。


敬具



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人生最初で最後になるであろう、自分の本を作っています。 これまで編集者として何冊の本を作ってきたか、前職まで含めると数えることもできません。膨大な数の本を編んできました。 でも自分が著者になるのは今回がはじめての体験です。 そしてほぼ間違いなく、最後の体験になります。 いまは企画書をブラッシュアップしながら、とにかくこれまで書いたブログをすべて読み返しているところ。 ざっとななめ読みして、使えそう

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