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  • 執筆者の写真みずき書林

『母と暮せば』―畑澤聖悟さんと井上ひさしさん


来月、次の新刊

畑澤聖悟著『母と暮せば

を刊行します。

大川さんの『なぜ戦争をえがくのか』で取材させていただいたことからつながったご縁です。


今回は、舞台台本です。

3年前に長崎の原爆で死んだはずの息子が、母親の元に現れて……というお話。


原案は井上ひさしで、山田洋次監督によって映画化されている作品を、畑澤さんが舞台用に再構成したものです。


井上ひさしの『父と暮せば』を読んだ人も多いと思います(こちらも映画化されていますね)。

『母と暮せば』はその対となる作品として井上ひさしが構想していたものでしたが、完成させる前に井上ひさしは死去。その遺志をついで、吉永小百合とニノという豪華キャストで山田監督が映画化しました。


そしてその映画を受けて、畑澤さんが舞台戯曲化しました。

とはいえ、映画版とはまったく異なる筋書きになっています。

大事なネタバレなのでここには書きませんが、ラストがぜんぜん違います。映画と戯曲を両方見たあとで、読書会をしたり意見交換会をしたりできないかなと思うくらい、味わいが異なる作品になっています。


本書には、戯曲に加えて、山田洋次監督と井上麻矢さん(井上ひさし三女・こまつ座代表)と畑澤さんの鼎談を収録しています。


また、畑澤さんの盟友であるドラマターグ・工藤千夏さんの長文解説も付し、さらに畑澤さんのエッセイもおさめています。



舞台版は7月から、新宿紀伊國屋サザンシアターを皮切りに九州を中心に巡演予定。

キャストはなんと富田靖子さん&松下洸平さん。

本書も各劇場で販売予定です。




畑澤さんの戯曲は、とにかくラストのセリフが素晴らしい。


井上ひさしが漱石の『坊っちゃん』のラストの一文、

「だから清の墓は小日向の養源寺にある。」

を評して、この「だから」は日本文学史上に輝くすばらしい「だから」の使い方だ、というようなことを書いていたはずです。


それに倣うなら、畑澤聖悟の『母と暮せば』の最後も(だれもが口にしたことのあることばです)、実に実にすばらしいことばづかいなのです。


装丁をステンドグラス風にしたのは、大川さんのサジェスチョンによります。


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人生最初で最後になるであろう、自分の本を作っています。 これまで編集者として何冊の本を作ってきたか、前職まで含めると数えることもできません。膨大な数の本を編んできました。 でも自分が著者になるのは今回がはじめての体験です。 そしてほぼ間違いなく、最後の体験になります。 いまは企画書をブラッシュアップしながら、とにかくこれまで書いたブログをすべて読み返しているところ。 ざっとななめ読みして、使えそう

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