top of page
  • 執筆者の写真みずき書林

あなたが旅に出る理由


時間に遅れないように早めに電車に乗って。

予定通り少し早めにテーブルについたらメニューを開いて。

トーマンクンもソムタンも美味しそうだとオーダーの計画を練る。

そんなふうに人を待っているのが楽しい。


ラム肉をトマトソースで煮込んだり。

白ワインを注いでムール貝が開くのを見守ったり。

みじん切りにした玉ねぎをじくじく炒めたり。

みんなが来る時間を気にしながら、そんなことをしているのが楽しい。


指定された喫茶店に少し早く着いて。

紅茶を飲みながら本を読んで待っている。

そのうちドアが開く音がして、背後に人の気配がして。

そんなふうに待ち合わせるのも楽しい。



空港の出発フロアの軽躁的な喧噪。

なかなか寝付けない機内で、読書灯の下で読む文庫本。

いつだってちょっと興奮する、外国の初日の朝の光。

歩いていると、にこにこと笑いかけてくる見知らぬおばさん。

あなたはそういうことをしているのが楽しいのだろう。

僕はそういう景色を想像するのが楽しい。


かつて小沢健二は言いました。


 ぼくらの住むこの世界では旅に出る理由があり

 誰もみな手を振ってはしばし別れる


いまは、あなたが旅に出る理由がよくわかる。

気をつけて。良い旅を。



最新記事

すべて表示

ずいぶん暖かい一日。 ここ数日苦しめられていた吐き気も今日は比較的穏やかに推移してくれています。 春眠暁を覚えずというべきか、やたらに眠い午前中を過ごしました。 午後からは仕事。 いま進行中の企画についてオンラインMTGを1時間ほど。 どれくらいのボリュームの本にするのか決めるためには、もう少し内容を精査する必要がある。 それからノルマにしている、自分の本の執筆をブログ3日分。ようやく2019年の

bottom of page