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  • 執筆者の写真みずき書林

ギュイーンとうなるエディのギター


高校2年生の頃、隣のクラスに土師君という同級生がいました。

土師君は長髪を茶色に染めた、いわゆる「不良」と呼ばれる人で、どっちかというと真面目なグループに属していた僕とはなんの接点もなく、ぜんぜん仲良くもありませんでした。

背が高くて、サッカーが上手くて、素行が悪くて、みんながちょっと恐れているような人でした。


当時ぼくは洋楽(という言い方もあまりしなくなったな)にハマっていて、時代的なこともあって、ハードロックやメタルなどを聞いていました。

ボン・ジョヴィとかデフ・レパードとかスキッド・ロウとか。

ギターがギュイーンって鳴るうるさい音楽。


田舎の高校生だったからか、そういう音楽を聴いている人は少数派で、洋楽好きの同級生たちとは、CDを貸し借りしたり同じラジオを聞いたりしながら、仲良くなりました。


ある日の休み時間に土師君が教室に入ってきて、僕の机の前にやってきました。

不良が何しに来たんだ、とクラスメイトがちょっと不安そうにこっちを見ていました。

まったく親しくない、いつも不機嫌そうな土師君が目の前に立って、僕はカツアゲでもされるのかと思いました。


すると土師君は「これ貸してやる」と言って、いきなり1枚のCDを僕の机に置いたのでした。

ヴァン・ヘイレンのファーストアルバムでした。

キンクスのカバーが入った、名盤の誉れ高い1枚です。

(いちおう書いておきますが、僕らが高校生だった当時でもそのアルバムは新譜でもなんでもなく、僕らが生まれたときに発売されたクラシックでした)

土師君はそれだけ置くと、さっさと教室を出ていったのでした。


彼もその手の音楽が好きで、あまり同好の士がいないから、そういうのを聴く相手を探してたんじゃないかな。と、あとで洋楽仲間だった共通の友だちが教えてくれました。


それがきっかけで、その共通の友だちを介して、何度かCDを貸したり借りたりしたはずです。

でも、いかにも一匹狼然とした土師君と、真面目で引っ込み思案だった僕とは、その後もとくに親しくなったわけではありませんでした。


もうひとつだけ憶えていることがあります。

体育の授業でサッカーをしたとき、キーパーをやっていた僕が思いきり蹴ったボールがどんどん伸びていき、まるで魔法で吸い寄せられるような見事さで、前線にいた土師君の足元に収まったことがあります。

素早くドリブルに移る直前に、土師君はグラウンドのはるか向こうから軽く手を挙げました。

そのときの、われながら完璧な弧を描いて飛んでいくボールの弾道は、不思議とよく憶えています。


エドワード・ヴァン・ヘイレンが亡くなりましたね。

彼のギュイーンとうなる騒々しいギターを聴くと、高校生の頃を思い出します。


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