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  • 執筆者の写真みずき書林

デヴィッド・ボウイの100冊

少し前の話になりますが、デヴィッド・ボウイが選んだ愛読書100冊のリストが公開されました。



ケルアック『オン・ザ・ロード』、ブルース・チャトウィン『ソングライン』やアントニー・バージェス『時計仕掛けのオレンジ』、オーウェルの『1984』など、いかにもボウイが選びそうな作家が見えます。



マーティン・エイミスやマキューアン、ジュリアン・バーンズなどイギリスの小説家が多くて、僕が(翻訳ですが)学生時代に好んで読んだものも多く、嬉しくなります。

三島もいますね。The Sailor Who Fell From Grace With The Seaだから『午後の曳航』か。



アメリカの作家も多いのですが、マイケル・シェイボンの『ワンダー・ボーイズ』があったのが、意外といえば意外でした。

この本は僕も大好きです。

マイケル・ダグラス、ロバート・ダウニーJr.、トビー・マグワイアで映画化もされました。

マイケル・ダグラスが主人公の小説家でロバート・ダウニーがその編集者。

悪友同士でいままで一緒に栄光をつかんできたけど、いまは落ち目でそれぞれのトラブルを抱えている。

そこに、すごい小説を書く奇矯な神童、トビー・マグワイアが絡みます。


ロバート・ダウニー扮する編集者が、著者と編集者の関係を訊かれて、

「作家は血の汗を流して死ぬ思いで原稿を書き、編集者はそのスペルミスを直す」

と答える場面が好きでした。


ラストシーンでは、「これからどうしたらいい?」と戸惑うその編集者に向けて、老作家がひとこと、

「improvise」

と答えます。



オフビートで飄々としたおかしさがあって、ボウイの趣味だったとはやや意外ですが、とてもいい小説でした。



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