17日、月曜日。
立命館大学東京サテライトキャンパスにて、原稿の読み合わせ。
〈戦争〉を視座として、岡本喜八の映画作品を論じる企画。
その名も、
『近頃なぜか岡本喜八――戦後日本映画における戦争と娯楽(仮)』
タイトルはいうまでもなく、喜八作品『近頃なぜかチャールストン』へのオマージュ。
同時に「近頃なぜか」には、昨今の国内外の状況を見るにつけ、喜八が描いた戦争および戦後がいまこそ気になる、という含意があります。
この企画が動き始めてから、喜八作品を集中的に観てきました。
僕のベストは『肉弾』です。
『沖縄決戦』『日本でいちばん長い日』などの大作もいいですが、『肉弾』のコミカルでシニカルかつシリアス描き方に、より深く惹かれます。
ナレーションの入れ方、途中で挿入されるイラスト、砂丘での女学生たちの演劇的なカット、ラストの現代へのジャンプと衝撃的なエンドロールなど、一種のファンタジーとして戦争をえがく演出に目を奪われます。
最近別件で取材したある作家は、自身の小説の執筆動機として「ファンタジーとしての従軍慰安婦」ということばを用いました。
喜八と5歳差の早坂暁は、自らを「身体の真ん中で、軍国主義に民主主義が接ぎ木されているようだ」と表現し、『天下御免』『必殺シリーズ』などで社会批判の装置として、時代劇を一種のファンタジーとして描きます。
そして戦争をえがく際の幻想的な演出という点で、『肉弾』は大林宣彦監督の一連の作品にも強く影響を与えていることがわかります。
実際、2018年に大林監督に取材した際には、岡本喜八への言及がしばしばありました。
取材の主旨とはややずれていたので、紙幅の関係で書籍には収録できませんでしたが、大林監督も『肉弾』を評して、「あれ、大傑作ですよ」とおっしゃっています。
「『江分利満氏~』と『肉弾』、この2本をもって喜八さんの代表作だと思います」とも。
『近頃なぜか岡本喜八』の詳細は近々またアップしますが、気鋭の社会学者の方々が、寄ってたかって面白がって作っている本です。
キーワードは〈カッコイイ戦争〉〈フマジメ〉〈余計者〉〈内戦〉〈キハチの遺伝子〉。
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