『マーシャル、父の戦場』執筆者のおふたりが、関連する記事を寄稿されています。
①「三田評論」No.1229
本書編者・大川史織さんがエッセイ「三十年の歳月」を寄稿しています。
「暮らしのいたるところに、委任統治下の名残と戦争の記憶が顔を覗かせていた。長老は「戦争が日本人を変えた」と錆びついた砲台を前に語った。タイムスリップしたかのような錯覚を覚える一方、戦争が遠い世界の出来事と感じてしまう日本の日常こそ、虚構の世界に思えた。」
「二〇一八年十二月、マーシャルと日本は国交樹立三十周年を迎え、わたしも三十歳になった。ささやかなつながりを感じる年に劇場公開が叶った今、次はマーシャル諸島での上映会を実現させたいと思っている。」
②都立第五福竜丸展示館ニュース「福竜丸だより」No.409
元駐マーシャル諸島日本大使・安細和彦さんが、「『マーシャル、父の戦場』を読む」と題して書評を執筆下さっています。
「本書の編者にして映画監督である女性が、友人の大川史織さんであるということが今もって信じられず、唯々「大川史織、半端ない!」と叫んでしまう。」
「核心は第六章の翻刻された日記であるが、(中略)副題は「冨五郎日記を体験する」とあるが、この副題こそ本書の通底する「歴史実践」を意味している。戦場日記の「作者」は佐藤冨五郎氏であり、大川さんは自らを「編者」としているが、彼女を含め翻刻作業に携わった方々は、戦場日記という歴史資料を解読し、その時代や状況を掘り起こす役割を果たしている。」
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安細大使は、大使という肩書から予想される官僚的なイメージとは真逆に位置する方です。
上記のテキストにもお人柄がにじみますが、ユーモアにあふれ穏やかで紳士的な方です。
自らも『私のラバさん酋長の娘』という小説を書かれている、異色の外交官でもあります。
そして、マーシャルの地理的特殊性および、委任統治時代~戦中期、戦後の度重なる核実験を経たマーシャルの歴史に強い関心と憂慮をいだいていることが、言葉の端々から感じられます。
この方がいらっしゃったからこそ、冨五郎さんの日記は多くの人たちとむすびつき、映画や本になるまでにつながっていったのだと実感されます。
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