5月11日。
横浜の新聞博物館にて、井上祐子先生の講演会。
「ビジュアル・メディア研究の立場から見た写真ニュース」
『秘蔵写真200枚でたどるアジア・太平洋戦争』も適宜ご紹介いただきつつ(笑)、主に戦中の「写真ニュース」について、多くの図版データを映しながら解説していきます。
「写真ニュース」とは以下のようなものです。
いまでも町内に掲示板などがありますが、ネットもSNSもなかった時代に、こういった場所に貼り出される写真付きのニュースが、世論形成に効果的であったことは間違いありません。
実際に、同盟ニュースが外地の宣伝慰撫に効果的だから写真ニュースを送られたしという軍部からの要望を伝える書類も紹介されました。
思えば、人というのは、随分とややこしいことを考えて、実行していくものです。
そのようにして作り上げられたややこしいシステムやネットワークが、しっかりと機能して効果を及ぼしていく様こそが、社会であり歴史であるのでしょうか。
これは当時の軍部(や今の政府)による意図的なミスリードということだけではなく、たとえば「毎日毎日、紙に最新のニュースを印刷して、毎朝、全国津々浦々の個人に届けよう」という新聞やニュースのコンセプトそのものへの感慨でもあります。
宣伝や広告やプロパガンダについて知るたびに、そういった感慨を覚えていささか呆然とします。
フロアから発言された有山輝雄先生の、
「戦争報道は、見ているつもりになってしまい、見えていないものが生じる。そのことに思いを馳せるべき」
という趣旨の言葉が、印象的でした。
井上先生が『秘蔵写真200枚でたどるアジア・太平洋戦争』の「おわりに」で書かれていた、
「言おうとすれば何とでも言えてしまうところに、写真を扱う難しさがある。本書は見る者のひとりである筆者が写真に意味づけをし、筆者の解釈に引き寄せ、アジア・太平洋戦争の歴史の中にそれぞれの写真を埋め込んだ危険な試みであるかもしれない。しかしあえてのこの試みの意図をご理解の上、これらの写真をどのように受容していけばいいのか……」
という文章を思い出させました。
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