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  • 執筆者の写真みずき書林

元上司のI氏

7月26日(火)雨のち曇



昔の同僚たちと旅行に行く夢を見る。

そんなこと、大昔の社員旅行以来したことないのに。


同期のYくん、Mくんがはしゃいでいる。

先輩のWさん、ふたりのAさんがバスの前のほうに座っている。

後輩のTさん、Kさんやそのほかの後輩たち。

社長のI氏もいた。


僕が知っていた古巣は、いまはすっかり様変わりしているのだろう。

いまはYくんが社長で、Tさんが副社長だ。

多くの後輩はもう辞めているし、僕の生涯唯一の上司だった社長/会長のI氏は引退した。


*


起きて、ベッドの中で肺がんのステージ4で45歳で亡くなった男性の記事を読むともなしに読んでしまう。

これまで僕は、滅多にこの手の記事を読まないで済ませてきた。

気を紛らわせる仕事があって、世話をしないといけない犬がいて、いざとなれば話ができる相手がいたから、ネットや記事や本で情報を収集する必要がなかった。

今朝に限ってふと読んでしまい、読みはじめたら最後までやめられなくなって、朝からがっつりヘコむ。


記事の男性は病気がわかってから2年間、治療の副作用はあったものの、普通の暮らしをしていた。

でも病状が急変して入院して、それからわずか1カ月程度で亡くなってしまったという。

長患いはイヤだけど、そんなふうにあれよあれよと最期を迎えてしまうのも恐ろしい。

あっという間で、きちんと準備をしたり受け入れたり、必要なことばを遺したりする時間はあったのだろうか。


*


2018年3月、僕の最後の出社の日。

夕方に上司のI氏が帰宅する。彼はもともとそういう性格なのだが、16年間勤めて後任の社長までやった部下が辞める日でも、別に愁嘆場を演じるでもなく、ねぎらいの言葉をかけるわけでもなかった。

ただいつも通り、ごく普通に帰宅しようと会社のドアを出た。

僕はその姿を見てあわてて彼の後を追い、エレベーターに乗り込む寸前で追いついた。

長い間お世話になりましたみたいなことを言って頭を下げたら、I氏はちょっと驚いたように、ほんの微かに顎を下げるような仕草をした。

エレベーターが締まり、それ以来、彼には会っていない。


Iさん、Y君はあなたの興した事業を継ぎ、同期入社の僕は自分で会社を作りましたよ。

我々ふたりは、あなたの職業上の弟子にふさわしく、ふたりともあなたと同じ中小零細出版社の経営者になりました。

いまならあのころより楽しく酒が酌み交わせそうですが、もう二度と会うことはないでしょうね。



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