面長の輪郭、頬から口角にかけてのライン、眉のかたち、切れ長の穏やかそうな眼もと。
似ているなとあらためて感じました。
佐藤勉さんはいま77歳。
『マーシャル、父の戦場』の装丁に映る佐藤冨五郎さんは35歳。
冨五郎さんがあと42年経ったら、勉さんのような顔になりそうです。
父のほうが息子に似るだろうと考えるのは、順番が逆なのですが、父のほうはいまから73年前に39歳で亡くなっていますから、逆に想像せざるをえません。
もし生きていたら、冨五郎さんは勉さんのような顔になったことでしょう。
装丁で、冨五郎さんが抱いている赤ちゃんが、勉さんです。
当時6カ月。
映画を観ればわかりますが、この子は、間違いなく父親を愛しています。
普通の父と息子の関係であれば、愛憎半ばする葛藤や対立はつきものです。しかし父は日記にすべてを書いており(より正確にいえば父のすべては日記であり)、それだけが唯一の父親像です。
父への愛情は完全に結晶化していて、変わることも消えることもありません。
数日前にも書きましたが、本日、勉さんに久しぶりにお目にかかり、その後にこの装丁の写真をじっと見ていると、この親子にとって幸せとはどういうかたちだったのかと考えてしまいます。
書籍内で、大林宣彦監督はこの写真を見て「この命は国家や権力に犯されない私だけのものという強い誉れがあります」と述べています。
インタビューを掲載した仁平義明先生は、あえて写真を90度回転させたデザインを見て、「勉、よくやったと、冨五郎さんが高い高いをしているようです」と評しました。
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