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  • 執筆者の写真みずき書林

友だちが増えた


これまでの全人生を通して、僕は友だちが少ないと思って生きてきました。

実際、僕は友だちが少ないし、でも少ないけれど皆無ではないので、それでいいやと思ってきました。


転機は4年前にひとりで出版社を立ち上げたとき。

それと、昨年の9月に病気がわかったとき。

このタイミングで、「友だちが増える」という現象が起きました。


ひとりで出版者を立ち上げると、まず同僚がいなくなります。

毎日顔を合わせていた元同僚たちとも、付き合いが続く人は続き、続かない人とは自然と会わなくなります。

続く人たちとは、友人としか呼びようのない関係になったりします。

著者との関わり方も変わりました。

もちろん相手によりますが、ビジネスライクなだけの関係からはみ出して、担当編集者/取引先という関係から変わっていく人もいました。


そして昨年の9月以降。

厳密に言えば、病気になったことと友人が増えたことがそのまま直結するわけではありません。

絶飲食の入院中の病室で、僕は料理の本や動画を見ながら、「退院したら知り合いをたくさん招いて食事会をしよう」と思ったのでした。

それは前からやりたいと思っていた企画でしたが、もともとシャイで人付き合いが苦手な僕としては、ホームパーティなどは憧れてはいても実行できないことでした。

でもやらないと後悔するかもしれないな、という病状になって、ひとつやってみることにしました。すると案外に楽しく、――同じタイミングでクリームという犬の友人が加わったこともあり――以来、何度か人を招いてごはんを作ったり持ち寄ったりするようになりました。

そのなかで、僕は学生以来の友人やみずき書林の関係者たちと出会い直していくことになりました。


たとえば、自宅に招いて食卓を囲むことからはじまって。

その人の地元まで遊びに行き、親姉妹や従兄弟とごはんを食べる。

仕事とは直接は関係しない芝居や博物館や映画を一緒に観る。

犬の散歩を一緒にする。

贈り物を選ぶ。

くだけた口調のちょっとしたメッセージを送り合う。

引っ越しを手伝う。



大人になったら、「あなたと僕は友だち」などといちいち確認し合ったりはしないものです。

相手がどう考えているのかは知りません。

でも少なくとも僕は、そういう人たちは、もう、友人と呼んでしまいたい。

もちろん、いまでも友人が多いとはとてもいえません。でも、僕の人生の重要人物はもう出揃っていると考えても何の悔いもありません。



この土曜日に、青山ブックセンターで桜林直子さんと土門蘭さんの『そもそも交換日記』刊行記念イベントを聞いて、帰りしなにそんなことを思いました。


イベント後に本にサインをもらったとき、短い雑談の最後に土門さんが「お身体いかがですか」と気遣ってくださったことが、とても嬉しかったのでした。







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