12月16日、六本木のサントリーホール、寺尾紗穂さんのライブ。
こうなるんじゃないかとは薄々わかっていたけれど、やっぱり涙が出る。
寺尾さんの世界は、死と別れの予感で満ちていて、歌詞世界が特に今の僕の状況を描いているわけでもないのに、ときおり、何気ない一節が、えぐるように心に刺さってくる。
とくに休憩を挟んでの後半が素晴らしかった。
最後は灰田勝彦「森の小径」→谷川俊太郎作詞「死んだ男の残したものは」→「北へ向かう」→新曲の「歌の生まれる場所」という流れ。
「森の小径」は特攻隊の若者が愛唱したという昭和15年の歌。
最後の一連、
なんにも言わずにいつか寄せた
小さな肩だった 白い花 夢かよ
という詩の「夢かよ」ということばづかい。
「死んだ男の残したものは」は、言うまでもなくベトナム戦争の頃に書かれた反戦歌。
こういう歴史・戦争を背景に持つ歌を選んでいまに蘇らせるところも、この歌い手らしい。
そしてオリジナルの「北へ向かう」。
MCでおっしゃっていましたが、お父様が亡くなった翌日に、ライブのために北へ向かう新幹線のなかで書かれたのだとか。
そういう意味では、前述のとおり、僕のいまのシチュエーションとは異なります。
でもこの曲の、たとえば、
僕らは出会いそしてまた別れる
叶わぬことにまみれては叫ぶ
という歌詞が、寺尾さんの高く透明な声で歌われると、もうダメなのでした。
3ヶ月前ならやり過ごせた歌詞だったかもしれませんが、いまはもう悲しくて泣けてしかたありません。
同じことは、アンコールの最後で歌われた「一羽が二羽に」にも言えます(大好きな曲です)。
一羽が二羽に
寄り添うだけで
ただそれだけで
はじめて聴いたのは、2019年7月の内幸町ホールでのライブでした。
そのときもいい曲だと思い、アルバム『北へ向かう』に収録されたときから愛聴してきました。
この曲もいまの僕には、また別の意味を持つようになっています。
本編の最後で披露された新曲「歌の生まれる場所」も、同じようにアルバムに収録されたら繰り返し聴くことになりそうです。
MCでは3月に新譜を発表するとおっしゃっていました。
そこに収録されるのでしょうか。
(ちなみに、この曲に入る前のMCでは河童の話をしていました。演奏中、照明が寺尾さんの頭のてっぺんにあたって髪の毛に光の輪ができて、まるで寺尾さんが河童みたいだったことも付言しておきます(笑))
3月を、楽しみにしていたいと思います。
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