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  • 執筆者の写真みずき書林

徒労感と苛立ち


毎朝起きたら、ざっと新着メールを読んで、ネットのニュースをチェックする。


今朝。

小学館『ポスト』に関連して、Twitterのリンクをたどって、ふだんは絶対に見ないサイトを見てしまう。

見なければよかった。

いや、こういうのを見ることも必要なことなのか。

朝からかつてない徒労感と腹立ちを覚える。



あまりこういうことは書かないようにしているのだが、書かないと今日の仕事が始められそうにない。



このてのサイトに書きこんでいる人たちがどういう年恰好の人たちなのかはしらない。

しかしおそらく、比較的若い層なのだと思われる。

そこでは、ある芸能人の発言が火種となって、彼らの歴史認識が語られていた。

先の戦争において、日本は一方的な被害者なのだそうだ。

日本の加害などというありもしない発言をした時点で、この芸能人は失格なのだそうだ。

日本のかつての罪科は、語られてはならないどころか、そもそもないのだそうだ。

ゆえに自分たちは人間的に優れており、彼らは劣っているのだそうだ。


もちろん、こういう人たちがいることは知っていた。

かつてこういう人たちは社会的にほとんど影響のない少数派で、ちょっと偏った認識を揶揄する対象でしかなかった。

しかしいまは、ある種の論客・有力者のなかにもこういう人が増えてきて、マジョリティーとして明らかな力を有している。昨年からずっと続く、有力出版社の差別的・独善的企画はその象徴だろう。



この呆然としてしまうくらいの認識の乖離は何なのか。

もちろん認識の差は常に生じるだろう。

それをすべてぴったり一致させようとするのは不可能だし、ある意味では危険なことですらあるかもしれない。

しかし、他者を貶めてまで自分が優位に立とうとするこの心性は何か。


日本は興味深い文化と伝統をもった国だと思う。学ぶに値する歴史も持っている。

でもそれは、たとえば韓国も中国も、スーダンもブルガリアも、ザンビアもアルゼンチンも、イラクもフィンランドも、デンマークもフィリピンもナイジェリアもギリシャもどこであれ一緒だろう。

もちろんそういった国について、僕は詳しく知っているわけではない。

でもちょっと想像すれば、そんなことはわかる。

どんな国も興味深い歴史と文化をもっている。

自分が優位に立つために他人を否定する必要は、どこにもない。



ついでに言っておけば、出版社がこういう差別的な企画を出すたびに、「昨今は出版不況だから、こういう煽情的な企画で資金回収しないと、出版社もやっていけないんだろう」という微温的な雰囲気があるが。

そういうことはない。この手の企画を立てたらぼろ儲けできる、というのは外部からみた誤解に過ぎない。僕は知っている。

もちろん炎上商法というのはあるだろう。今回の『ポスト』が(後世のための反面教師資料としても、)広く買われたのは間違いない。

だが、それが及ぼした大小長短さまざまなダメージを勘案すると、わりに合う商売ではない。


さらについでに。

「編集部のなかで反対の声を挙げる人はいなかったのか」。

これもよく言われることだが、組織がでかければでかいほど、声を挙げにくい体質になる。

同調圧力。

その中で声を挙げて抵抗するのが難しい場合も、ままある。それはほんとうに、勇気がいることなんだ。

また言うまでもないことだが、みんながみんなこういう問題に敏感なわけではない。

(大手出版社は配置換えをしばしば行うから、そこまでの意欲を持たずに『ポスト』編集部配属になっている社員もたくさんいるだろう)

みんながみんな声を出せるわけではないし、声を出したいわけでもない。


声を挙げるべきだと感じた人は、すでにやっている。

内部で、忸怩たる思いを抱えながら、自分のやれることを続けている人もたくさんいる。

そういう人たちがいれば、会社は反省しながらよいかたちに動いていけるのだろう。

変質してしまった会社はもう個人の力では元に戻らない。迂遠に過ぎる。と思うなら、さっさと抜けて、ひとりでそれがやれる環境を作れ。



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