今日の昼に早坂暁先生の奥様にお目にかかり、形見の品をいただきました。
先生は「趣味は電飾」というほど電灯を好みました。
先生の実家は勧商場という商家で、いまでいうデパートの前身のような大きなお店です。その明かりが届く範囲であれば、夜になっても外で遊んでいてよかったということです。
渋谷の歓楽街のど真ん中でずっと暮らしていたことからも、先生の「街の灯」好きがわかります。
「Bar」の文字が光るネオンサインを買ってきて部屋の出窓に飾っていたら、酔客が間違えて入ってこようとしたこともあったとか。
その色とりどりで賑やかな光を、「浅はかな明かり」と呼んで愛着を表していたとのことです。
このランプは先生の所有のひとつ。
昭和のネオンのような、薄暗いバーか一昔前の喫茶店のカウンターにでも置いてありそうな、華やかで暖かで、でも壊れて消えてしまいそうな「浅はかな明かり」です。
いかにも先生の描いたドラマの小道具として出てきそうです。
もうひとつ。
こちらは先生の所有していた腕時計のひとつ。
小さな箱にたくさん入っていたなかから、選ばせていただきました。
奥様によると、先生はしょっちゅう時計を忘れたり失くしたりして、そのたびにそれほど高くない時計を買う癖があったとのことです。その結果、たくさんの時計が遺されました。
先生と会うときは午前中も多かったですが、午後であれば15時とか16時くらいにお約束するときが多かったと記憶しています。
この時計はたまたまその時間で止まっていました。
この時計を選んだもうひとつの理由は、バンドが擦り切れていたからです。
下からみっつめの穴を使うと、ちょうどこの擦り切れている位置に金具が来ます。
おそらくこの腕時計は何度も使われて、幸運にもどこかに置き忘れられることもなく最後まで残ったのでしょう。
みずき書林には、わずか1年間でたくさんの大切なものが増えました。
大事にします。
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