がんだと告げられた日のことは、以前に書きました。
そのときはがんが転移していることはわかっていましたが、原発巣がどこかはわかっていませんでした。
そのことを告げられたのは、10日後の9月6日(月)。
雨が降っていました。
五反田にある病院の診察室。もしかしたら、10日前にがんだと告げられたのと同じ部屋だったかもしれません。似たような部屋が多くてわからないのですが。
この日のことはあまり憶えていないのですが、スキルス胃がんだと告げられ、部屋を出た瞬間に口をついてでたことばは憶えています。
「最低や」
と言いました。
それから、廊下のベンチに座って実家の両親に電話をしました。
僕が自分のこととして「スキルス胃がん」というワードを発したのは、そのときが最初だったと思います。
両親と話をしているうちに、あまりのことに落涙しそうになりましたが、そのときベンチの隣におばちゃんが座ったので、泣くのはやめました。
せっかくだからお昼ご飯をすませて帰ろうということになって、妻とふたりで、入院中はいけなかった病院内のカフェテリアで、オムライスを食べました。
そしたらこれがとてもハイレベルの、デミグラスソースのたっぷりかかったふわとろオムライスでした。さすがNTT関東病院。私立はレベルが高いぜ。
コロナ対策で横並びに座らされた妻と僕は、オムライスの意外なおいしさに顔を見合わせました。
どうやら僕の胃はあまりまともな状態ではないらしい。しかし、そんなことはおかまいなしだ。僕は最後の一口までオムライスをそこに送り込んでから、タクシーで帰宅したのでした。
こうして振り返ってみると、憶えているのはそんなことばかりですね。
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