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  • 執筆者の写真みずき書林

穴子のお寿司だけ

今日書いた原稿より部分的に抜粋。

病気になるのは悲しいけれども、悪いことばかりではない、という話。


*


家の近所に、昔よく通っていた寿司屋がある。ランチのセットが安くて美味しい。休日の昼にたまに妻とふたりで行っては、ランチセットで日本酒を飲んだりした。

今日のお昼は久しぶりにそこのランチをテイクアウトしてきた。僕はもうほとんど食べられないので、一人前だけのテイクアウト。

(ふたりで店に入って一人前しか頼まないわけにもいかないので、もっぱらテイクアウトに頼ることになる)

帰宅してそれを分け合って食べた。僕は好物の穴子と玉子だけ。それでも美味しかった。でも穴子を食べたところで、嘔吐して食事を中断せざるをえなかった。嘔吐している間、妻は僕の背中をさすってくれていた。

ほんのしばらく前までは、お店に行って当然のようにひとりで一人前ずつ食べて、日本酒やビールも飲んでたのにね。でもしかたがないね。穴子だけでも味わえてよかったよ、と言うと、妻は少し泣いた。できることが少しずつ少なくなっていくのは悲しいね、と。

できることが徐々に少なくなっていくのは悲しい。でもそれを分かち合える人がいて、僕はまだしも幸福なのだと思う。


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