• みずき書林

蒸しパン、お疲れさま。


広尾から日比谷線一本でいけるのは楽で助かる。

6時過ぎくらいに東銀座駅に着く。

空のスーツケースを抱えて階段を上がり、歌舞伎座付近に出る。まだしばらくは空は明るいけれど、さすがに暑さも落ち着いてきている。

首都高の喧騒に混じって、蝉の鳴き声が聞こえる。一匹だけ、妙にがんばっている蝉がいる。

遠くに、綺麗な女性の大きな看板が見える。どこかの建築会社の広告で、この2週間で見慣れた。あの看板のふもとくらいに、森岡書店がある。そこまで、まっすぐな道を歩いていく。


2週間前に始まった、森岡書店での『なぜ戦争をえがくのか』の展示会も今日で終わり。今日は搬出のために、最後に森岡さんに向かっている。

いい大人になって、いまさらセンチメンタルになるような年齢でもない。イベントはいつか終わる。それはわかっている。別にいい。

でも、どういうわけだか、胸が苦しい。なんだかひどく切なくて疲れている。


森岡書店に着くと、大川さんが若い女性と話をしている。

某社で森岡督行さんの担当をしている編集者。同年代くらいで、すっかり仲良しみたいだ。


森岡さんがいて、間もなく後藤さんもやってくる。


19時になって、撤収作業開始。

といっても大した作業ではない。

残った本やCDをカウントしてメモして、スーツケースに詰めていく。

プロジェクターとスピーカーを仕舞って、コードをまとめて片づける。

展示していた作品を梱包する。


2週間前の搬入のときに大川さんが荷物を入れて持ってきて、そのままカウンターの後ろに置いていた袋のなかから、ぺちゃんこになったコンビニの蒸しパンが出てくる(笑)。

4人で、蒸しパンをみて笑う。この2週間、暑いなかご苦労様。

皆勤賞は、森岡さんでもスタッフの柳澤さんでもなく、大川さんでも僕でもなく、すっかり忘れさられ、それでも袋の中で一部始終を見ていた蒸しパンだった。



ガラスに貼っていたカッティングシートを剥がしているときに、森岡さんが言う。

「大川さんがたくさんの出版社と知り合って、気が気でないでしょう?」

何でもない雑談なのだろうけれど、いまそんなことを訊くのはやめてください(笑)。そんな質問には答えたくないから、テキトーな返事しかしたくありません(笑)。

われわれは出会って、いつか別れていく。のだろう。

コロナの最中。首都の感染者数が爆発的に増えた最中。オリンピックの最中。でも楽しかった。このイベントと、同時開催の今野書店のフェアがなければ、この夏は気持ち的にかなりきつかったと思う。



みんな、サンクス。

明日から体制を整え直して、またいつものひとり営利団体に戻る。

でも今夜は、ぺちゃんこになった健気な蒸しパンを抱きしめて眠りたい気分(笑)。

お疲れさま、ありがとう、蒸しパン。



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