• みずき書林

『野生の思考』――1/26読書会


1/26(土)は知り合いのデザイナー・黒田陽子さんに誘われて、読書会へ。

山本貴光さんを迎えて、ずっと続けている会とのこと。



テキストはレヴィ=ストロース『野生の思考』(みすず書房)。

初参加で、いきなりハードな課題図書でした。

新参者なので、端っこのほうでプリンのように座って震えていただけでした。



いかなる名作も――名作だからこそ――それが生まれた歴史的・作家的な文脈のなかで把握してみないと真価がわからない。というものだと思います。

〈文化的〉と呼ばれる多くの作品は、なんの予備知識もなくコンテキストも知らずにそれだけを享受して、それでも面白いと感じられるほど甘いものではありません。


ところがたとえば漱石の『坊ちゃん』は、ビートルズの音楽は、ヒッチコックの映画は、いきなり単品で観ても面白かったりします。もちろん、そういった作品も時代背景やバイオグラフィーを知ることでより深く味わえるようになるものですが、ともあれ独立してキャッチ―であることは確かです。

そういった作品の〈キャッチ―さ〉について考えたいなと思うと同時に(構造主義的発想)、より大事なこととして、「わからないからといって拒絶しない」ということを再認識しました。


***


テキストの性格上、当然ながら実存主義と構造主義について話が及んだわけですが、読書会の本筋からはいささか離れるものの、ふたつの作品を連想したのでメモしておきます。


ひとつは例によって保苅実『ラディカル・オーラル・ヒストリー』。

保苅実が構造主義的かどうかはともかく、たとえば『野生の思考』のなかの、


「人類の出現以来いままで地球上につぎつぎ存在した社会は何万、何十万という数にのぼるが、それらの社会はそれぞれ、自らの目には、――われわれ西洋の社会と同じく――誇りとする倫理的確信をもち、それにもとづいて(中略)自らの社会の中に、人間の生のもちうる意味と尊厳がすべて凝縮されていると宣明しているのである」


「そこに生きている人びとの立場に身を置き、その人たちの意図をその原理とリズムの中で理解し、一つの時代ないし文化を一つの「意味する総体」と見るのである」


「世界史と称するものにしたところで、いくつかの地域史の並列にすぎない」


といった箇所は『ラディカル』をはじめ、後に続いたものを感じさせます。

西洋世界を相対化し、それ以外にも固有で等価な世界があるという観点を定着させたことが構造主義の最大の功績だとすれば――保苅実がレヴィ=ストロースを読んでいなかったわけがないはずで――やはりその影響力は圧倒的だったと思わないわけにはいきませんでした。



もうひとつ連想したものは、金子みすゞの「わたしと小鳥と鈴と」です。


わたしが両手をひろげても、 お空はちっとも飛べないが、 飛べる小鳥はわたしのように、 地面をはやくは走れない。

わたしがからだをゆすっても、 きれいな音は出ないけど、 あの鳴る鈴はわたしのように、 たくさんなうたは知らないよ。

鈴と、小鳥と、それからわたし、 みんなちがって、みんないい。


という、例の有名な詩ですね。

この詩、「一度限り・ひとり限りの自分の生や感覚がなによりも大切である」という意味では、実存主義的な内容を持っているといえるものです。

そして上記の構造主義の功績を考えてみるときには、「みんなちがって、みんないい」というのは構造的でもあると思いました。


構造主義的により正確に言おうとすると、「みんなちがって、でも実はみんなおなじで、みんないい」ということでしょうか。



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