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  • 執筆者の写真みずき書林

〈顔が見える〉ことと〈読まれる〉こと

昨日は田中さん主催の日記文化の研究会。


NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争』の制作ディレクター・長野怜英さんと酒井有華子さんの発表ののち、討論。


とても刺激的な話だった。


個人的に面白かったのは要約すれば2点。


1点目は、何度も書きもして喋りもしていることだけど、つまるところ〈顔が見える〉という点に、僕は感興を憶えるということ。

「NHKが作った大作ドキュメンタリー」といわれれば、膨大な数のスタッフが関わっていることは明らかで、われわれ視聴者としては、どこの・だれが作ったのかということはいったん度外視して――というか多くの場合、そのようなことには大して関心すら払わず――©NHKとして視聴することになる。


でも今回の研究会のように現場のディレクターから直接話を聞く機会があると、やはり現場には強い矜持とモノ作りへの情熱があることがわかる。

ひとつひとつのカットに思い入れと拘りがあり、描かれない背景や選ばれなかった選択肢があり、ときに妥協と計算があったことがわかる。


もちろん、そういう現場のコンテキストは、視聴者には関わりないことでもある。

実際には、放送される映像だけで、あらゆる判断や評価は下されることになる。作り手がどんな思いを持っていたかなどは、多くの場合、関係がないし、作品はそれとは関係なくそこに自立しているべきであろう。


それは承知の上で、僕個人としてはこういう話を聞くことが好きなんだと思う。

NHKという組織を一瞬遊離して、ディレクターが個人の思い入れを語りはじめるとき、長野ディレクターの眼光の鋭さを垣間見てどきどきする。


*


2点目は、〈読まれる〉ということについて。

件のNHKスペシャルの番組は、日記をベースに作られている。

これら近現代の日記は読者を想定しているか、というのはなかなかに複雑な問題で、一概には言えない。

一般的には、日記は個人的なもので、有名人でもない限り、自分以外に読まれることを想定していないと思われているかもしれない。

しかし小学生の日記は先生に読まれることを意識しているし、交換日記はともに書く相手を読者とする。普通の日記であっても、読まれることを意識して書かれる場合が多々あることは谷崎の『瘋癲老人日記』などを読んでもよくわかる。

この日記が後世に伝わって広く読まれるかもしれない……とまったく意識したことのない日記ライターは少ないだろう。


我々は何かを書くときに、読者を意識せざるを得ない。


ひるがえって、僕がほぼ毎日書いているこのブログであるが、ブログは完全に読者を意識した媒体である。

アップした瞬間からそれは世間様の眼に触れることになる。

家族が読み、親戚が読み、著者が、仕事仲間が、友人が、そのほか、明らかに僕の交友範囲を超えた人数が読んでいる。


とくにこの1年は、なるべく正直に書こうと思っている。

それでも、真っ正直であることと、何ら取捨選択をしないこととは、微妙に異なる。

いちいち書かないこともあるし、(とくに体調面のことなど)書かないほうがいいだろうと判断することも、当然ある。


*


1と2の点をあわせて何が言いたいのかというと、要するに僕は〈顔を見せられているか〉ということだと思う。

このブログを通じて、僕はみずき書林の岡田林太郎という人間の〈顔〉をなるべく見せていきたいと思っている。

そのような人間が、このような本を作っているのだと知ってほしい。

そのような人間が、このように暮らして、いるのだと知ってほしい。

おそらく僕と同好の士がいるとすれば、そのように〈顔が見える〉人間が作っている本には、愛着を持ってくれるはずだから。


繰り返しになるが、そのような僕個人の属性とは関係なく、本は本として自立して、その価値を持つ。

それは当然のこととして、僕は本をよすがにして、この場を舞台にして、なるべく正直に自分を書き残しておきたい。


日記文化の研究者のみなさまにとって、このような自己語りが、堂々巡りの自己撞着として批評乃至は分析の対象になりやすいことは承知の上で、それでもなお、研究会に参加するたびに、われとわが身を振り返ってしまう。

そういう視点をもらえることを得難く感じています。

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