いま書き出してみたら、今年刊行したい本がちょうど10冊あることがわかりました。今さらながら。
10冊って、ひとり出版社としては相当に多い。
予定通りに全部出れば、小社としては2018年に創業して以来、最大の刊行点数になります。
トップバッターは、福間良明先生編の『昭和50年代論』。
なんと600頁オーバーの大著。
続くのは、蘭信三・松田利彦・李洪章・原佑介・坂部晶子・八尾祥平の6先生が編者をつとめ、26名もの執筆者が参加した『帝国のはざまを生きる』という研究書。これまた700頁越えの大著。
この2冊を3月中にかたちにします。
その後くらいに、藤岡みなみさんのタイムトラベル専門書店utoutoのZINE、第5巻がいよいよリリース予定。
目下、鋭意制作中。
今までのZINEが30頁程度だったのに対して、なんと100頁越えのスペシャルバージョン。その名も『タイムトラベラーの教科書』。
さらにその後は……おいおい書いていきましょう。
ひとまず上記の3冊については、間もなく正式な情報を解禁できれば。
その後も、神話学あり、アーサーあり、遠い国に材を取ったエッセイあり。
写真集あり、戦時中に広島・長崎を撮った写真家の復刻あり。and more.
忙しくなりそうです(もうなってる)。
なにより、林太郎氏の本造りの自在さに、圧倒されています。例えば、『戦争をなぜえがくのか』の付録の栞は1冊の本を世に送りだす直前、むすめを嫁にやる父親の愛と同様の愛をこの栞に感じました。つまり、岡田林太郎のブック愛です。一冊の本を生みだしてもなお、出版者として、これで十全なのだろうか? という問いを引きずりつつ、本造りの段階で尽くせなかった小さなシコリからこの栞が誕生した。と、思いたい。(実際にはそうでなくてもっと早い段階で仕組まれた企画だったと思いますが)、本に「足りない」ものを付け足す自在さを感じさせるのだと思う。巻末に投げ込まれた4つ折りのペーパー8頁が二折り。つまり16ページのメッセージと、この栞自体に教えられることの多かったこと限りない。この問いと答えはすべてが「戦争」を軸としている分、みすず書房の「読書アンケート特集」から得られる情報を遙かに越えています。紹介される本の大半がわたしにとって、身につまされる「本」ばかりが選択されています。初めて知る本が多かった。
つまり、付録の「おまけペーパー1」『アーティストたちの推薦する〈歴史・戦争を知るための一冊〉』「おまけペーパー2」『なぜ戦争をえがくのか』〈参加アーティストたちの主著リスト〉は、大林宣彦さん、大川史織さん、小泉明郎さん、諏訪敦さんほか、執筆者ばかりでなく、岡田林太郎さんの交友のあったかたがたに、個々に一冊だけ、とりあげてもらって、7〜8行でその本のおもしろみ・出合い、に答えてもらっている。そこに込められたメッセージが濃すぎる。ここに紹介された、この本たちが私の扁平な戦争に対する意識を覚醒させ、かつ、世界に対峙する根っこは自由を創出することだというあたりまえのことに導いてくれた。
なにより、本造りの可能性と自在さを刊行する直前まで辛苦する社主を見たことをメモしておきたい。