ジュンク堂池袋本店さんにて、『なぜ戦争をえがくのか』のトークイベントを開催します。(オンラインでの配信となります)
今回は、編著者の大川史織さんを進行役に、画家の諏訪敦さんと漫画家の武田一義さんをお迎えします。
諏訪さんには、満洲で亡くなった祖母を克明な描写で描いた《HARBIN 1945 WINTER》という作品があります。
武田一義さんは、ペリリュー島での日本軍の戦いを描いた『ペリリュー――楽園のゲルニカ』がもう間もなく完結を迎えます。
諏訪さんの絵画は恐ろしいまでの技巧で写実的に描かれていますが、「相手の姿を薄皮一枚はがして「これがあなたです」と言い切るような」作品ではありません。
まず豊かで健康な祖母の身体を描き、それを画面の上で徐々に殺していくという手法で描かれています。画面の背後には、すでに見ることのできないライフヒストリーが描きこまれているわけです。
いっぽう、武田さんの画風は可愛らしくシンプルです。。
とてもコミカルな三頭身のキャラクターが、生き残りをかけた壮絶な戦場に投げ込まれます。可愛らしいタッチだからこそかろうじて読み進めることができるような、シンプルな線だからこそかえってまっすぐに胸を突いてくるような、そんな作品です。
そんな対照的な絵を描くおふたりの共通点は、〈綿密な取材で想像力を刺激する〉点ではないかと思っています。
NHKのディレクター・中沢一郎氏や当時の満洲を知る鈴木俊寛氏、戦史研究家の平塚柾緒氏や編集者の高村亮さんといった協力者を得て、彼らは徹底した取材を行います。
そのようにして描かれた作品は、観るものに、〈そこにいた人〉〈そこであったこと〉を想像することを促します。
まったく異なる画風を持ちながら、かつて実際に起こったことを想像させるという共通点をもつこのおふたりの組み合わせは、美術史的にも、サブカルチャー表象という面でも、実に画期的なことなのではないかと思っています。
戦争とか歴史とか、そういう部分を除いたとしても、絵やマンガを描く人・愛好する人にとって、ひろく興味深い対話になるはずです。
このおふたりを1冊の本に同居させた編著者の大川さんの慧眼というべきでしょう。
取材のために諏訪さんのアトリエに向かう途中、大川さんが小さく笑いながら呟いたことばを覚えています。
「たぶんわたしは、今まで諏訪さんに取材した人のなかで、一番絵がヘタだと思う……」
大川さんの画力については、見たことがないから知りませんが(笑)、ドキュメンタリー映画の骨法とは、〈見る〉ことと〈聴く〉ことにあるのではないかと思います。
自身の映画で、あるいは今回の本作りで、丁寧に見て、真摯に聴いてきた大川さんだからこそ、今回のトークイベントでも、フロアの代表として、よい話を導いてくださると思います。
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ちなみに、諏訪敦さんは今週末14日(日)に、冒険家の荻田泰永さん主催のイベント「冒険クロストークvol.6 遠ざかる対象、動き続ける絵画」にも登壇予定です。
この荻田さんのクロストークのvol.4のゲストは、戦場ジャーナリストの桜木武史さんでした。
桜木さんは武田一義さんと『シリアの戦場で友だちが死んだ』(ポプラ社、2021年)を一緒に刊行していて、大川さんとは山本美香賞の受賞者同士でもあります。
みんなちょっとずつつながっているんですね。
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なお、ジュンク堂のイベントは、通常チケットは1500円ですが、書籍付だと2630円となります。
書籍は2200円なので、430円でイベントが聴ける or 1130円で本が買える、とお考えいただければかなりお得です。
ぜひよろしくお願いいたします!
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