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  • 執筆者の写真みずき書林

情と理


「アンガーマネジメント」ということばがあります。


ひところ流行って、いまはわりと定着した感があることばです。

もともとは心理学・医療用語なのだと思いますが、いまはどちらかというと、ビジネス界というか、主に仕事や人間関係上の日常的ないらだちをコントロールする技術、というニュアンスで浸透しているように思われます。


このことばに対応するような、「悲しみをコントロールする」「恐怖をコントロールする」という用語はあるのでしょうか。

例によってネット検索などしないで書いていますが(ネット検索をしすぎると「書く」という行為が徒労に思えてくることがあります)、僕が思いつくくらいだから、きっとすでにそういうことばはあるのでしょう。

ノウハウも確立されているのかもしれません。


そういうことを手っ取り早く知りたいような、知りたくないような。


ひとまず検索には頼らず、迂遠ながらも自分で考えてみることにしましょう。


この数日ぼんやり考えていたことをひとことで書いてしまうと、やはり感情を受け入れることと、それを理性で制御することが大切かもしれません。


まずは、怖いとか悲しいとか、嫌だとか目を背けたいとか、そういう負の感情が沸き上がってきたら、それを否認しないで、そのまま受け入れること。

「受け入れる」とはどういうことなのか、わかったようなわからないようなことばですが、これについては土門さんが書いていて、以前も少し紹介した「マザーリング」ということばが役に立つように思っています。


たとえばベッドで寝転んでいるときに、仕事の合間にふと手を止めたときに、入浴剤を入れた湯船に浸かっているときに、感情が高ぶってきたら、「怖いねぇ」「イヤだねぇ」と声に出して呟いてあげる。単純なことばに言語化する。

そういう行為に代表されるような、シンプルな感情の受容を行うこと。


次に、それを理や知によってコントロールしようとすること。

これももしかしたら前に書いたかもしれませんが、かなり早い段階で決めたルールがひとつあります。

「怖がっていいのはすでに決まっている直近のひとつだけ。その先のことは直視しない」

というものです。

たとえば再来週は化学療法の日でまた点滴を受けないといけないとか、いま背中にちょっと違和感があるとか(あくまで一例です。実際にいま現在背中が痛いわけではないのでご心配なく)、すでに決まっている直近の物事については、どれだけ怖がっても泣いても喚いてもいいことにする。それこそ感情を受容し、思いっきり怖がって悲しんでいい。

でもそのかわり、まだ決まっていない未知の出来事については、直視しない。


この場合「直視しない」とは、徹底的に目を背けて逃げることを意味します。

僕は真正面から敵にぶつかっていくような戦い方が正しいとも、自分に似合っているとも思っていません。この際、逃げ回って知らんぷりするような方法でも、ぜんぜんかまわないと思っています。

ときに、その場から逃げることは、踏みとどまるよりも勇気のいることです。

相手が未知で得体が知れないのなら、考えてみてもしかたがないのです。

どうせいつか向こうからやってくるのなら、「それ」が目の前に現れるまでは、こちらから探し求める必要はありません。

このあたりはロジカルな思考法を総動員して、マイルールを作り、理と知によるコントロールを試みます。


それでも怖いとか悲しいとか、嫌だとか目を背けたいとか、そういう負の感情が沸き上がってきたら、→①に戻る。以下無限ループ。



つまり、

感情が暴走しないように理知で制御すること。

それでも制御できない感情は受け入れること。



……こういうことを書くと、わりと理性的に、ある種の達観をしているように思えるかもしれません。

でも、実際にはそんなことはまったくありません。


舞台裏の事情を書けば、このブログは両親家族も読んでいるので、あまり混乱したことは書きたくない、という気持ちもあります。

同時に、僕は書くことで「こういうふうに考えること」と自分に言い聞かせているところがあります。

読まれていることを意識しているからこそ、ある種のステートメント/マニフェストとして書いているということです。


考えていることは日々変わります。

今後も、さまざまな要因によって、毎日考えていることは変わり続けるでしょう。

僕は達観などまるでできていませんし、それどころか、いまここに書いたことを実践できているわけでもありません。

まだまだ、実践したい、と思っているところ止まりです。

その気持ちすらも、明日にはまた変わっているかもしれないのです。


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