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  • 執筆者の写真みずき書林

『いかアサ』発売日!――Q&Aその1


3月10日。

『いかアサ』の発売日です。

花粉症&二日酔い(昨日は研究会に参加していて、そのまま紹興酒(1次会)と日本酒(2次会)を混ぜるというアレな飲み方をして、すっかり残ってしまいました。この研究会についてもいずれ書きたい)で絶不調のなか、何件かの書店さんを回りました。


紀伊國屋の新宿本店さんでは、なんと1階のレジ横に平台を用意していただき、がっつりと並べてくださっています! ここは、話題の書籍とかフェアとかの本が並ぶところで、こんなところに置かれたのははじめてです。

見た瞬間に、文字通り目を疑い、頭がクラっとしました。このクラっと感は二日酔いのそれではない。

しばし呆然としました。そしてすぐに岡本・小宮両編者に画像を送りしました(撮影およびSNSアップは、書店さんの許可を得ています)。

担当の方に話をして、ポップやポスターもでき次第お渡しすることになっています。


紀伊國屋新宿本店。感涙に咽ぶ。

ジュンク堂池袋本店。

ここでは4階の人文棚(神話のコーナー)と、地下のコミックのコーナーと、2か所で展開くださっています!

4階にはちょうど顔見知りの担当の方がいて、棚まで案内くださいました。ちょうどアーサー版が売れたとのことで、目の前でランスロットとガウェインを向い合せにする〈円卓完成フォーメーション〉にしてくださいました。

地下のコミック売り場ではfate関連の本がずらっと並ぶ位置に面陳いただきました。こちらにはアーサー版もまだあります。

こちらでもポスターなどが出来次第お届けするというお話をさせていただきました。


ジュンク堂池袋4F。アーサー様不在で一触即発のふたり。

さらに、山田南平先生がいつもの時間ではないタイミングでブログをアップ下さいました。

今日の午後に書店に行かれる方のために、あえてお昼の時間に書いてくださったのだと思います。

しかも、あろうことか日高万里先生まで『いかアサ』のことを書いてくださり、円卓写真を上げてくださっている……。

ありがたさに涙がこぼれそうになりました。


ジュンク堂池袋コミック売り場。手書きポップ、ありがたいです…!

さらにTwitter上では、手に入ったという方、入手できなくてやきもきされている方の投稿が続きます。

京都や大阪では発売されていることも確認できました。

しかし、ネットの海はまだまだ静かに凪いでいます。


新宿紀伊國屋、池袋ジュンクで大きくフィーチャーいただいている喜び、店頭発売が間に合った安心感、ネット書店などではまだ入手困難な表示が続いていること、皆様の反応のありがたさ。

いろいろな思いが渦巻いた一日でした。



さて。

発売日に本が並んでいることは確認できましたが、先述のように、住んでいる場所や環境によって、ばらつきが生じているのも事実です。

これは出版流通のシステム上の話にもなります。すごくややこしくてケースバイケースの場合も多くて、なかなか一筋縄では書きにくいのですが、以下ではいくつかの疑問についてQ&A形式で説明を試みたいと思います。

なるべくフクザツな話にならないように、可能な限りわかりやすく……を心がけますが、いささかわかりづらい話になるかもしれません。



【Q1. どうしてうちの近くの本屋さんにはないの?】

これは上記のブログで山田先生も書いてくださっていますが、

「これ多分本屋の大きさ関係ないんだよな。重要なのは、こういう一風変わった本を入荷しようという発想の書店員さんがいるかどうかなんだよな」

というのが、まさにおっしゃるとおりです。


本が全国各地の書店に送られることを〈配本〉といいますが、ごく簡単にわけて書籍の配本には二通りあります。


・〈委託配本〉:書店規模に応じて、自動的にまんべんなく配本されます。「あそこの書店は大きいから10冊、あそこは小さいから1冊……」みたいな感じで、いろんな本がレディメイド的にパックにされて機械的に書店に送られます。メリットは、広範囲に撒けること。デメリットは、書店員さんの意向に関わりなく様々な本が届くので、店頭での扱いはどうしても小さくなり、結果的に業界全体の非常に高い返品率の原因になっていること。


・〈注文配本〉:書店さんにFAXやチラシ、訪問などでチラシを配布し、その本を欲しいと思った書店員さんから注文をもらう形式。デメリットは、撒ける数は少なくなる。メリットは、書店員さんが自ら選んでいるので、「売れる」「売ろう」と思える本だけをたしかに配本できる。


『いかアサ』は後者の〈注文配本〉形式です。

『いかアサ』に限らず、小社の本はすべてそうです。

さらに言えば、専門的・少部数の本を作っている出版社の多くは、委託はしていないことが多いです。店頭に並ぶことは大事ですが、撒くだけ撒いても半年後に大量に返品されては意味がないので。

僕のような出版社の立場から言わせてもらえれば、委託配本は書店の仕事をいたずらに増やし、取次店の輸送現場を疲弊させ、出版社に自転車操業を余儀なくさせます。もちろんこれはある程度専門性の高い本を出している僕の観点であって、雑誌や文庫や新書を作っている版元にとっては委託は不可欠です。委託配本の弊害を断じるつもりはなく、本の性格によって配本形式を考えたほうがいい、という話です。

(また、より正確にいうとみずき書林は取次レスの〈トランスビュー方式〉を用いています。その一方で、八木書店さんという取次さんとも取引しています。この話はさらにややこしいので、いまは割愛します。いずれにせよ、〈注文配本〉がメインであることに変わりはありません)


そんなわけで、『いかアサ』は、欲しいと思った書店員さんのところにだけお送りしています。

もちろん、冊数も書店員さんが決めます。

どんなに大きな本屋さんでも、「この本はうちの客層では売れない」と判断されたらその本屋さんには行きませんし、小さな本屋さんでも「これは買う人がいるな」と思われれば注文をいただけます。

実際、『いかアサ』では「ガウェイン版3冊。あとはゼロ」という強気な注文をくださった書店さんもいました(笑)。えと……いいんですか? 緑のやつだけ3冊ですぜ?とは思いましたが、いうまでもなく、そこは出版社が介入することではありません。


さらに付け加えると、配本された本を「いつ・どこに並べるか」も書店さん任せになります。

たとえば昨日、注文した書籍が届いても、その段ボールを開けて中身をチェックし、お店の情報に登録し、棚に並べるという仕事は、当然ながら書店員さんに任されます。

そして、書店員の仕事というのはものすごく忙しくて、肉体労働に近い側面も持っています。日々、ものすごい量の本が届きます。彼ら/彼女たちがどういうサイクルで棚の整理をするのか次第では、「バックヤードまでは来ているけど棚にない」ということも起こりうるはずです。

つまり、本の〈発売日〉というのはあってないようなものなのです。雑誌など発売日が厳密なものは、もちろん正確に管理されています。人気作家のベストセラーも、フライングすることはできないし、遅れることもしないでしょう。しかしそれ以外の(つまりほとんどの)本については、数日のタイムラグが生じることもありえます。

出版社にできることは、その日までに本を届けること。そこから先は、それぞれの本屋さんに委ねられることになります。


ついでに書いておくと、「どの棚に並べるか」というのも基本的には書店さんの判断です。

『いかアサ』も、新刊の棚、神話、コミック、ヨーロッパ史、英米文学……といろいろなところに並んでいることが確認されています(皆様のtweet、とてもありがたく拝見しています)。

出版社としては、チラシにジャンルを書いておいたり、足を運べる場合は棚についても相談したり、スリップにジャンルを記入したり、いろんな試みをしてはいますが、どこに並ぶかは本屋さんのスペースとも関係するので、一概には言えません。


さらに書いておくと、新しい本を1冊棚に並べるということは、古い本を1冊返品するということでもあります。この判断はとても難しいものであり、書店にとってはひとつひとつの判断が経営に直結します。

そのような限られたスペースの中で勝負するときに〈カバー違いで3パターン〉という特異な形を面白がって注文をくださった書店員さんに感謝申し上げます。



さて。ではお近くの本屋さんで入手するための最適解はなにかというと。

これはもう、注文をすることに尽きます。

注文すれば、書店は確実に配本希望を出し、本も取りおかれます。

間違いなく地元の書店で入手する手段は、実はこれくらいしかありません。



書き始めたときからわかっていたことですが、べらぼうに長くなりつつあります。

(そしてこういうことを書き始めると、言いたいことは次々と出てきます)

もっとさらっと説明する能力があればいいのですが、面倒なテキストですいません。

いったん、ここまでをアップ。



以降はこんな予定で。

【Q2. どうしてネット書店ではすぐに発送されないの?】

【Q3. 増刷って聞いたけど、それまではもう手に入らない?】

Q&Aは、まだまだ続く……!


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