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  • 執筆者の写真みずき書林

トロントでの多幸感


久しぶりに『いかアサ』とは関係のないことを書きます。

2年前、僕はAASという学会に参加するためにカナダはトロントに行っていました。



2017年のちょうど今頃。

出国前日までもろもろの仕事をして疲れ果てていて、シカゴだかどこだかで乗り継いで長時間のフライトの末にトロントに着きました。着いたらすぐにブースの設営などをしました。

午後は時間ができたので、疲れてはいましたが、せっかくなのでトロントの美術館に行ってみることにしました。

現代美術を中心に展示している、かなり大きな美術館でした。

数日前まで雪が降っていたらしいですが、その日はとてもよく晴れていました。


どんな作品があったのかはあまり憶えていません。鉄パイプを組み合わせた巨大なオブジェとか、チェーンソーでぶった切って彩色した木の根とか、くれると言われても断るような類の、例の現代美術です。

作品を観ながらいくつかの部屋を抜けて、休憩室のような部屋にたどり着きました。

目の前は全面ガラス張りで、トロント郊外の住宅地がどこまでも広がっています。家々の色とりどりの屋根には、溶け残った雪がまぶしく輝いています。

ベンチがあったので座ってぼ~っとしていたときに、一瞬、いわく言いがたい強い多幸感に包まれたのを覚えています。


そのときのガラス窓を通した日差しの暖かさ、雲ひとつない透けるような青空、隣にいた黒人の子どものはしゃぎ声、目の前のまったく知らないおそらく二度と見ることのないであろう街並み、溶け残った雪に光があたってきらきら輝く明るさなどは、くっきりとした印象とともに僕のなかに残っています。


そのときに感じた圧倒的な多幸感は何だったのでしょう。

啓示的というとなんだか怪しい感じですが、ことばにするのが難しい感覚でした。

もし詩を詠むことができるなら、ああいう感じをことばにできるのに、と今も思っています。



今年のAASはデンバーにて。

僕は行きませんが、小社で刊行中の『マーシャル、父の戦場』の編者大川さんが監督した映画『タリナイ』が上映されます。

異国の地で、さらに遠くの海の風景を見つめる体験は、もしかしたら不思議な多幸感をもたらすかもしれません。



ことばにできない思いが、ここにあると指さすのが、ことばだ(長田弘)



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