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執筆者の写真みずき書林

寺尾紗穂さんと、怒り


7月13日

寺尾紗穂さんライブ。

内幸町ホール。

写真家の樋口健二さんとのトークイベントを寺尾さんの演奏で挟む構成。


開演の合図から間髪入れず現れた女性が足早にステージを横切って無造作にピアノの前に座ったと思ったら、それが寺尾紗穂さんであった。

飾り気なく、拍手するいとまもなく、演奏が始まる。

舞台はピアノが置いてあるだけで、シンプル。

照明を反射して、ピアノの鍵盤が背後のスクリーンに光の模様を作っている。

寺尾さんの歌声は、高く張りつめていて美しい。いっぽうで、MCの声はやや低く、淡々としている。

「一羽は二羽に」、熊本・葦北の守子歌「ねんねしなされ」と「たよりないもののために」が特に印象的。


優しく綺麗な音楽だが、澄んだ声には慈しみとともに怒りの微粒子が含まれている。

トーク相手の樋口さんの底流にはわかりやすくたしかに怒りがあり、ユーモアに包みながらも、彼はそれをはっきり口にして、感情にあらわす。そのせいもあってか、寺尾さんの思いがトークのなかで明示される機会は少なかったが、寺尾紗穂の底にも、静かでたしかな怒りが感じられる。


たとえば、音楽とことば、写真とことば、映画とことば。ふたつの違う方法を等価に操れる表現者は立体感がある。

あるいは、音楽であれ写真であれ映画であれ絵画であれ、ことばとは不可分の関係にあり、そのことに自覚的な表現をしている人は、強い。


ことばっていいよね、ことばって怖いね、と思える歌声だった。

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