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本当はこうあるべきだったスピーチ

執筆者の写真: みずき書林みずき書林

人前で喋るのが苦手です。

とくに即興で何か喋ることになると――そのことについては日常的に考えて、言いたいことがたくさんある事柄であったとしても――なかなかうまく伝えることができません。

しどろもどろになって、もっとこういうふうに言えばよかった、言いたかったと後悔することもしばしばです。


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『マーシャル、父の戦場』は僕にとって特別な本です。

おそらくこれからずっと、この本を作っていた頃のことを、楽しく充実していた日々としてずっと覚えていることでしょう。

なぜ特別なのでしょうか。

4月に創業して7月に刊行したので、編集期間の後半が異様に圧縮された時間だったということも理由として挙げられます。

映画『タリナイ』と伴走できたことで、刊行後も話題や販売機会が長く続いているという楽しさもあります。

その結果、はじめて増刷できたという点も大きいです。

でも、この本が特別である最大の理由は、多くの魅力的で優れた人たちと出会えたことです。そしてその関係が、これからも続いていくと期待できることです。


佐藤冨五郎さんという誰も知らない方――勉さんですら、ご記憶はありません――が遺した日記が、われわれを結び付けました。冨五郎さんの世代、勉さんや大林監督の第2世代、三上先生に代表される第3世代、大川さんたちの一番若い世代と、さまざまな人々が等しくこの日記に関わりました――冨五郎さんと一番若い執筆者の間には、85年もの年齢差があります。

冨五郎さんの日記にとって、そして歴史を身近に感じてみようという試みにとって、こんなふうに各世代の方が一緒になったのは〈正しい〉ことであったと感じています。

そこに加わることができて、とても光栄です。


これからもそういう本作りがしたいものだと思っています。

多くの人に出会っていきたいと願っています。

この本は、みずき書林がどういうふうに本を作っていけばいいのかについて、最初のモデルになってくれました。


最後になりましたが、勉さん、お身体にお気をつけて、いつまでもお元気でお過ごしください。

映画と本の暖かなトーンを決め、そこに集まった人たちの好ましい雰囲気を作ったのは、まず何より勉さんのお人柄の賜物だと思います。

勉さんを中心に、こんなふうに集まる機会がこれからも続くことを願っています。


佐藤勉さん

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