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  • 執筆者の写真みずき書林

父と暮せば


先日、紀伊国屋サザンシアターにて『父と暮せば』を観ました。


いうまでもなく、井上ひさしの名作。

芝居を観るのははじめてですが、映画も観ていて、本も読んでいます。だからこりゃ泣くだろうな、ということは観る前からわかっていたんです。


泣きたい感情がこみあげてきて、それを何とか我慢しようとするときって、奥歯のほうに力が入りますよね。

そうすると頭蓋骨の奥の方から「ごごごご」というくぐもった音がしませんか?

耳の奥の空洞に水が溜まっていくみたいな音です。

あ、いかん。やばいやばいと思っていると、じわっと涙が出てきます。

後半は、美津江が何かいうたびにグッっときちゃって、もうだめです。

こういうのを観るときには、涙と鼻水を吸収したあとの、替えのマスクがいりますね。



ところで、『父と暮せば』の主人公は福吉さんです。


美津江 昭子さんが福村、うちが福吉、名字のあたまがおんなじ福じゃけえ、八年間通して席もいっしょ、陸上競技部もいっしょ。じゃけえ、うちらのことを二人まとめて「二福」いう人もおったぐらいでした。

竹造 二人じゃけええかったんじゃ。もう一人二人、福の字のつくんがおってみい、まとめて「お多福」、いわれとったかもしれんけえな。


というやりとりがあります。

さっきふと気づいたのですが、『母と暮せば』の親子は福原なんですね。

このあたりの洒落っ気は、井上ひさしの遺志を継いだ山田洋次さんでしょうか。


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