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痛快ウキウキ通りも8時以降は灯が消えて
小沢健二の「泣いちゃう」という新曲がリリースされました。
かつて、
東京タワーから続いてく道
君は完全にはしゃいでるのさ
と歌っていた人が、
表参道は街路樹が灯らなくなり
明治神宮前まで空いてます
と歌い出します。

ジャケットの小沢健二は、ぱっと見はほとんど年を感じさせません。
年齢的には――僕もそうであるように――すっかり大人なんだけど。
そしてマスクをしています。
東京タワーをすぎる急カーブを曲がり
あっというま海が見えりゃ気分も晴れるでしょ
と歌っていたあの人が、
わたしたちは 一人のキッチンで
世のありさまを呪いつつ
泣いちゃいます
と歌っています。
彼のセカンドほど多幸感に溢れたアルバムを僕は知らないのだけど。

わかる わからない
わからないことはふえてゆきますね 生きてると
わからない わかる
わかることもふえてくる まじめに暮らしてると
今はあの頃ほど熱心に彼の音楽を聴いているわけではないけれど。
でもよく聞くと、あいかわらず子どもっぽい歌詞ではある。それだけにいっそう、なんだか悲しい。

小沢健二は不意に、でもしばしば、「宇宙」から見た「この世」を歌うことがあって、さっきまでダッフルコート着て恋人とはしゃいでいた男がいきなり神瞰的な慈しみを歌うところが彼の面白さなのだけど、
遠くから届く宇宙の光 街中でつづいてく暮らし
と歌っていた彼が、
ああ 地球は美しく
秘密の雫が降ってくる
でもそれを 表で言うと
なにか危険な人と思われそう
と歌っている。

我われはいま、あの小沢健二が大人になって、ちょっとへこたれそうになって、ことばを探しあぐねているような世界に生きている。
『LIFE』を愛聴していたころは、こんな気持ちで彼の新曲を迎えることになるとは思ってもみなかったなあ。