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  • 執筆者の写真みずき書林

自信と恥じらいの間


先日、著者との打ち合わせのあとの飲み会で、こんなことを言われました。

「岡田さんはたまに自分を卑下するような言い方をすることがある。会社が小さいとか、弱いとか。そういうことは言わないと約束してください」

その方にも苦手なことがあって、「私も○○ができない、みたいな言い方はしないようにするから、岡田さんもそういう言い方はしないと約束してください」

という、飲みながらの冗談めかした交換条件でした。

そんなふうにまったく強い言い方ではなかったのですが、だからこそ、虚をつかれるものがありました。

たしかに、そういう自嘲的な気分がどこかにあるのは確かです。

でもそういうことを口にするのは、いいことではないですね。

作っている本はいいものだと自負しています。

なによりも、書いてくださる著者の方々が素晴らしく、装丁家と組版担当の方をはじめとする、関わってくださる方のクオリティも非常に高い。

にもかかわらず、妙に卑下してみせるのは皆に失礼だし、美しくないなと反省しました。

そういうことは言わないようにしよう。うん。


また先日。

あるtweetが目に入りました。

大学の教授で、僕が愛読しているある哲学の本の著者でもあります。

その方曰く、

「日本の大学が産業界から講師を招へいするのは、間違っている。なぜならいまの日本の経済状況が悪いのはいまの産業界の責任であり、そこからあたかも成功例のように人を招いて講義させても、悪しき先例を刷りこむことにしかならない」

ことばづかいは違いますが、おおむねこのような趣旨のtweetでした。

これも、考えこませるものでした。

ぼくはいま、出版業にそこそこ長く携わっているという理由で非常勤講師をしていますが、ぼくのやりかたが成功例だなどとはまったく思っておらず、こんなふうにやったら上手くいくよなどと言うつもりは毛頭ありません。

とはいえ人前で喋る以上は、おどおどしているわけにもいきません。なんとかして生きていくにはどうすればいいか、そのヒントというか反面教師というか、現場中継のような心持でやっているつもりです。

でも知らず知らずのうちに、自分の仕事や知識を、どこか得々として語ってはいないでしょうか。



かつて吉行淳之介は、「どうせ持つのだから、せめて良質な劣等感を持っていたい」といったことを言いました。

たしか養老孟司は、「人間たるもの、多少の後ろめたさを抱えて生きているくらいがちょうどいい」みたいなことを書いてたはずです。


ほどよい自信と適度な恥じらいを持ちたいものです。



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