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  • 執筆者の写真みずき書林

2018年のBGM


寺尾紗穂

"たよりないもののために"

2月。この時期は、どうしたものかという思いを抱えながら、寺尾紗穂の音楽を聴いていました。わけもなく会社を早退して、2時間くらいかけて歩いて自宅まで帰りながら、ずっとその音楽を聴いていた日もありました。

そして辞めることを宣言した前日も、この人の音楽を聴いていました。


Max Richter

『Recomposed by Max Richter: Vivaldi – The Four Seasons』より、"Spring 0"、"Spring 1"

3月。細かい雨が降っていたひどく寒い日。靖国神社の境内で著者と待ち合わせ。著者は遅れていて、僕は暗灰色の曇天のなか、傘をさして待っていました。

そのときには、会社を辞めることを決めていました。もとより著者は知りません。

そのころはしばらく、ひどく不安で落ち着かない気分でした。

そのときにイヤホンから流れていたのが、来るべき春に向けて伸び上がるような高揚感に溢れたこの曲でした。

原曲であるビバルディの「春」も思い出深いのですが、ここに挙げた冒頭の曲の多幸感は素晴らしい。


KORN

"WORD UP"

3月末。前職の最後の仕事としてワシントンDCに出張しました。

行きの飛行機で『キングスマン ゴールデン・サークル』を観たのですが、最後のアクションシーンでかかるのがこの曲です。

オリジナルはいうまでもなく86年のカメオ。94年のGUNによるカヴァー(誰も知らないだろうな)は、高校時代に聴いていました。それからすごく久しぶりに、KORNのバージョンとフライト中に再会しました。

この騒々しい曲を聴くと、「この旅から帰ったら全部変わる」というあの頃の(曲調とはまったく不釣り合いな)ふわふわとした感覚を思い出します。


藤岡みなみ&モローンズ

"それでそれで?"

4月。独立したて。

ご縁があって、藤岡さんには本に寄稿をいただいています。我々の間に立つ共通の知人としての編者が「みなみの本質は詩人」と言っていたのを覚えています。

40歳の僕がこの歌詞に共感するのはどうなのか。という意見もあろうかと思いますが、こういう感じをうまいこと詞にするのはいいですね(「映画とかあまり興味ないけどね」という明らかにフィクショナルな言葉遣いも含めて)。

もう一曲、「世界の名前」とともに(こちらは、40だろうがなんだろうがシェアできる詞です)、この頃もっともよく聴いた曲です。

なお、僕の考える「よい編集者の条件」とは、「聞き上手」であることです。


Jimmy Eat World

"If You Don't, Don't"

6月頃? みずき書林社屋。

ひとりになって何が嬉しいって、仕事中に好きな音楽をかけられるのが嬉しかった。

基本的に、いつも音楽をかけています。

頭を使わないといけないときは、ボーカルのないクラシックや音数の少ないジャズを流していますが、発送などの機械的な作業のときは、ハード・パンキッシュなものまで含めて、わりと騒々しい音楽をかけます。

アジカンとかFall Out Boyとか、いいですよね。この手の曲に乗せて社判とか押すと、つい余計なとこにまでハンコつきそうになりますね。

これもそのなかのひとつ。

この歌詞、ぼくの英語力ではなにを言っているのかよくわかりません。特に難しい単語を使っているわけではないのですが、全体としては何を言ってるのかわかりづらく、すきっとニュアンスがわからない。

英語堪能なきみ、教えてくれないか。


Jason Mraz

"Unlonely"

8月。実家。

毎年のこととして、この時期は実家の岡山に帰ります。

蒸し暑い夕方頃、東京から持ってきてしまった公共料金の支払い的な書類を処理しなくてはいけなくて、コンビニに歩いていたことを思い出します。そのときにイヤホンから流していたのがこの曲です。人生のなかで、まるで重要ではないはずのひとときです。なぜそんな場面をいちいち覚えているのかはまったくわかりません(笑)。でも、わけもなくそういう時間を覚えています。

これから先もこの曲を聞くたびに、夏の夕暮れ時、公共料金を支払うためにコンビニに向かっていた、味も素っ気もない実家の国道沿いの歩道を思い出すのでしょう。


The end

"Juuri tok"

9月頃から今まで。マーシャルの歌については、かつて長いテキストを書きました。あれからすでに3カ月が経ちました。いまなお、この曲のリフレインを聴くたびに、鳥肌がたち、心が震えます。

いまから何十年も経って、今年のことが遠い記憶になったときにこの曲を聴き直したら、どんな気持ちがするのでしょうか。そのときのことを、楽しみにしつつも少し恐れています。

そのときの僕が、今年この曲を共有した人たちに恥じない生き方をしていますよう。


the End

"eba eba"

これもまた9月頃~。これもまたマーシャルの曲。

まったく有名ではないどころか、映画を観ないといまの日本では聴くことすらできない曲です。だからこそ、僕にとっては特別な音です。

我ながら稚拙な言い方だとは思いますが、僕自身も含めて、この音を聞き、何らかの意味でこの音に関わったすべての人に幸あらんことを。と祈りたいような気持ちになります。


John Butler Trio

"Tahitian Blue"

10月。前から好きだったバンドの新譜。出すべき本をとりあえず出し終わり、初期衝動のようなものがやや薄れ始めたかと感じるや否や、次の展開が起こり始めた頃を思い出します。

今まで一緒に本を作った人たちに新たな展開が起こり、これから本を作る人たちとの間にも密接さが増していったころ。

Sail your ship up on the shore with battered masts and broken oar.

Let me aboard to play my part. By letting me into your heart.



以上、ものすごく雑多なカタログですが、今年一年の極私的名曲群。

なお、ここ最近はずっとDavid Bowieを聴いています。

最近過ぎて今年のサントラにエントリーするのは気持ちへの浸透度的にまだ少し早いですが、もしかしたら”You’ve Been Around”や”Miracle Goodnight”(ボウイのなかでもまるで有名曲ではない……)を聴いて、この頃のことを思い出す日も近いかもしれません。



Black Eye Blue Eye

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