A5判並製・カバー装・縦組・304頁
定価:本体3200円+税
ISBN:978-4-909710-02-4 C3030
2018年6月刊行
ジャンル:社会学・近現代史・映画
装丁:宗利淳一
戦争社会学研究2 戦争映画の社会学
戦争社会学研究会 編
娯楽映画の抵抗と迎合――
市川崑と塚本晋也によって二度映画化された『野火』。同作を中心に『この世界の片隅に』『戦艦ヤマト』などなど、フィクションは戦争をどう描いてきたかを論じる。
内容紹介
大岡昇平による原作『野火』(一九五二年)。
市川崑による映画『野火』(一九五九年)、そして塚本晋也版『野火』(二〇一五年)。
同一作品は、表現形式によって、時代によっていかに変奏され、受容されるのか。
また、山本五十六の表現から『戦艦ヤマト』『この世界の片隅に』まで、娯楽作品において戦争はどのように表現され、消費されてきたのか。
社会学・歴史学・人類学のアプローチから、文学と映画に描かれた戦争を読み解く「特集1 戦争映画の社会学」。
「特集2 旧戦地に残されたもの」では、ニューギニアを舞台にした戦友会の活動、マーシャルでの朝鮮人軍属の問題、遺骨収集や戦後保障の問題を考える。
目 次
特集1 「戦争映画の社会学」①『野火』の戦争社会学
『野火』の戦争社会学―特集企画について/ 山本昭宏
戦争映画の社会学のために―塚本版映画『野火』を題材として/野上 元
「野火」に映る戦後―「難死」と「嘲笑」の後景化/ 福間良明
『野火』の戦争社会学のために/成田龍一
『野火』にみる武蔵野の風景とフィリピンのゲリラ/青木 深
人肉食が起こりうる世界を物語るということ―ふたつの映画版『野火』における宗教的要素の扱いをめぐって/松下優一
特集1 「戦争映画の社会学」②戦争娯楽映画の系譜
「戦争映画」の拡大領域/山本昭宏
戦争娯楽映画を読み解く―山本五十六作品を比較する/好井裕明
『宇宙戦艦ヤマト』から『君の名は。』へ―美少女が象徴する戦うアニメの系譜とその論理/足立加勇
戦争遺産へのまなざし―アニメーション映画『この世界の片隅に』を事例に/濱田武士
特集2 旧戦地に残されたもの
旧戦地に残されたもの―特集のねらいと補助線/西村 明
遺骨収集の「再開」と戦友会―東部ニューギニア戦友会の活動を中心として/中山 郁
旧帝国圏における日本人戦没者の遺骨処理問題―「国の責務/責任」に関する歴史的考察/浜井和史
太平洋戦争期のマーシャル諸島での朝鮮人軍属/趙 誠倫
「戦争の記憶」の状態―太平洋諸島における対立と連携に関する省察/キース・L・カマチョ
投稿論文
日本占領期ジャワにおける占領統治と衛生の確立/小林和夫
書評
戦争社会学の地平をめぐって『戦争社会学―理論・大衆社会・表象文化』/若林幹夫
戦争の「神話化」と「平凡化」をジェンダー化する『「戦争体験」とジェンダー:アメリカ在郷軍人会の第一次世界大戦戦場巡礼を読み解く』/南川文里
「被害者」の資料をいかに扱うか『「慰安婦」問題の言説空間』/加島 卓
脱植民地化・脱軍事化のための歴史叙述に向けて『戦禍を記念する―グアム・サイパンの歴史と記憶』/長島怜央
国家は死を管理できるか『記憶と追悼の宗教社会学』/荻野昌弘
著者プロフィール
戦争社会学研究会
戦争と人間の社会学的研究を進めるべく、社会学、歴史学、人類学等、関連諸学の有志によって設立された全国規模の研究会。故・孝本貢(明治大学教授)、青木秀男(社会理論・動態研究所所長)の呼びかけにより2009年5月16日に発足し、以後、年次大会をはじめ定期的に研究交流活動を行っている。
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