沖縄-奄美の境界変動と人の移動――実業家・重田辰弥の生活史
野入直美 著
四六判上製・カバー装・縦書・口絵16頁+本文352頁
定価:本体2800円+税
ISBN:978-4-909710-16-1 C0036
2021年2月刊行予定
ジャンル:社会学・沖縄
奄美にルーツを持ち、満洲で生まれ、沖縄で育ち、東京で起業し、境界を越えたビジネス・ネットワークを築いた重田辰弥(1940~)。そのライフヒストリーは、戦前と戦後、米軍統治時代と復帰後、そして現代のグローバル時代まで、個人史であると同時に、ひとつの沖縄現代史ともなっている。
インタビューと論考から、〈生きられつつある現代史〉が浮かび上がる。
内容紹介
「なんというか、沖縄じゃないっていう意識があったのよ。少し違和感、みたいなね」
「籍が同じじゃないとダメっていうのが差別なんだよ」
「満洲の大連というのは、洗練された大都会だから、奄美に帰ってきたら、そこから来た私らは超エリートなの、垢抜けしていて。植民地の一側面だね」
個人によって生きられた移動史は、その人をとりまく社会の境界変動と呼応しあってきた。
その過程を、《沖縄―奄美》という視点によって提示することが本書の社会学的な課題であるのだが、それは、歴史や空間の広がりの中にいる「個」の軌跡によってもたらされる。「個」は、しばしば歴史や空間の中で制約され、影響されるが、必ずしも「歴史に翻弄された」というような受動態にはとどまらない。
重田さんという「個」の軌跡は、この本を読んでいるあなたの「個」とどこかで重なり、響き合うかもしれない。
その共鳴の中で、あなたの「個」もまた、生きられつつある現代史となり、歴史や空間の広がりの中に再発見されていくだろう。
目 次
第一部 ライフヒストリー篇
第1章 現在の重田辰弥さん―会社の承継、ガン発症とブログ発信
第2章 沖縄―本土就労の流れをつくる―起業と沖縄からの雇用
第3章 在琉奄美人の決断―琉球大学を辞めて早稲田大学へ
第4章 移動の中で育つ―満洲、奄美、沖縄
第5章 沖縄と海外をつなぐ―WUB東京・初代会長として
第二部 論考篇
第1章 島を出る女性―本土出稼ぎという「冒険」
第2章 島人(しまんちゅ)の同族結合―出郷する弟、家守の兄
第3章 奄美の漁業と本土・沖縄文化
第4章 人口流出の島―奄美・瀬戸内町のいま
第5章 米軍統治下の奄美から沖縄へ
第6章 境界の動態―奄美/琉球/日本
第7章 雇用主から見た沖縄ー本土就労
第8章 「世界のウチナーンチュ」という現象
第9章 結語
編者プロフィール
野入直美(のいり・なおみ)
1966年生まれ。琉球大学人文社会学部人間社会学科准教授。主な著書に、『異文化間教育のフロンティア』(共著、明石書店、2016年)、『ハワイにおけるアイデンティティ表象――多文化社会の語り・踊り・祭り』(共著、御茶の水書房、2015年)、論文に「主観と愛着の沖縄アイデンティティ――「世界のウチナーンチュ大会」調査に見る海外沖縄県系人の意識」(『移民研究』14号、2018年)などがある。