山田南平先生『金色のマビノギオン――アーサー王の妹姫』第3巻の発売日です!
なんと、先生からご恵贈いただきました。
御礼申し上げます!
カバーは赤い目のマーリン。
めくってすぐに黒い瞳の真先輩と、誰か……。
漫画家さんというのは、たんに画が上手というだけではないのだと、実感されます。
カット割り(というのかコマ割りというのか、専門用語はわかりませんが)や擬音擬態語、吹き出しの置き方ひとつで、効果的に演出をしなければなりません。
なによりストーリーが作れないといけません。
物語を作る才能というのは、画を描く才能とはまた別で、それをふたつながら持っているというのは、すごいことだなと感じます。
とくに『金マビ』のように、〈一次資料/原典/広く知られた基本構造〉がありながら、それに独自のストーリーを加えていく場合には、そうとうな時間を費やしてツイストを生み出しているはずです。
100%オリジナルのストーリーをフリーで考えていいわけではなく、忠実に従うべき原作があるわけでもない。そのはざまで、オリジナリティを出しながらも整合性をとっていく。
今回のランスロットの登場などは、まさにその妙技です。
読者は――とくにアーサー王好きの読者は――この後の物語がわかっているわけです。
でも、相当な改変が加わっていることもわかるので、そこに「もしかしたら未来は変わるんじゃないか……?」という救いや光明を求めながら読んでいくことになります。
そのあたりの、タイムトラベルものならではの匙加減が絶妙です。
個人的にぴくっとなったポイントは、
1.P56、手書き文字でさらっと小さく書かれている、「神道とドルイド教って実はかなりにている」というセリフ。
このセリフ、この件はすごく喋りたい。けど、ここを膨らませると本筋から離れてしまう……でも喋りたいから、軽くジャブだけ打っておく……という山田先生の思いがにじむようです。
2.P124、ウーゼルのときは……というニニアンのセリフがあります。
これも元のお話を知っていれば、あああれね、有名な……ということになり、なるほどランス爆誕の方法がこじつけではなく、〈写し身の術〉の妥当性がそのエピソードから生じていることもわかります。
前の巻で、イグレインはすでに登場済みですし、ウーゼルにもちょいちょい言及があります。
でもウーゼルのことは作品ではまだ描かれていません。
ここのところは『いかアサ』内で斉藤洋先生が触れている点でもあり、編集中もたびたび話題に挙がったポイントです。
今後、どう描かれるのか。楽しみです。
最後に、『いかアサ』的注目ポイントは、やはりP205。
おそアサ会参加者は、もはや平常心で見ることができないページです。
詳しくはこちらをどうぞ。
中世の写本の話を聞くにつけ、『金マビ』は、原典を自由な想像力で展開させていくというアーサー王文芸の歴史サイクルの王道で脈打っている作品であるとわかります。
そして、写本の画を見るにつけ、「画のうまさと上手なストーリーテリングのふたつが両立している」『金マビ』がいかに稀有な作品かがわかります(笑)。
もうひとつの注目点は、巻末の参考文献に挙げていただいている点です!
スペシャルサンクスに国際アーサー王学会日本支部と、われらが小宮先生・椿さんのお名前が!
そしてそのすぐ上に『いかアサ』が挙げられています!
参考文献を通読する人はあまりいないかもしれない。が、みんな、見てくれ!
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