豚の角煮。
スベリヒユのおひたし。
冷奴。
大根とワカメの味噌汁。
我ながら地味な見た目の食卓ではある。もう一品、鮮やかな色のものが欲しかったな。
スベリヒユは、山形県で食べられる雑草で、別名はひょう。
『マーシャル、父の戦場』の冨五郎日記では、赤草、スベリ草の名で登場します。ビタミンDが豊富だとか。
昭和19年8月7日
「スベリ草」苗ヲ見付ケタノデ
自分ノ畠ニソシテ其ノ一部ニ植付ケヲ行フ。
乾燥した草を一度煮たてて、煮汁ごと一晩置きます。それから水にさらして、細かく刻みます。
冨五郎さんはどのようにして食べたのでしょうか。
当時彼のいた島に、油揚げ、糸こんにゃくなどといったものがあるはずもありません。
僕は同封されていたレシピ通り、そういったものと一緒に、出汁で煮ました。
油揚げと糸こんにゃくをごま油でさっと炒めて、そのあと煮干出汁、醤油、みりんと酒、砂糖少々で煮ます。
あまり濃くしないで薄味で。
茎の部分がやや硬めなので、柔らかくなるまでじっくり煮込むのがよいようです。
また、味が染みるので、煮つけてから一晩おいてからのほうが美味しいと思います。
見た目はきわめて地味ですが、葉の部分はほうれん草のような青い菜を、茎の部分は蕗を、それぞれ素朴にしたような味わいがあります。
山形県でしか食べられないこういった草が、かつてマーシャル諸島で、わずかな食料のひとつとして植付されていたことも、不思議な縁で知ることができ、また口にすることができました。
(スベリヒユは、本に参加くださった仁平義明先生→三上喜孝先生→佐藤勉さんというリレーで、今日の食卓にのぼることになりました)
「たくさん食べることが父への供養だから」と勉さんに言われたと、アーヤ藍さんがおっしゃっていました。
いかにも勉さんらしい、歴史実践のかたちです。
スベリヒユも、映画も本も、噛めば噛むほど味わいがにじみ出してきます。
噛み応えはあるけれど、栄養価は高いよ。
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