9月刊行予定の新刊、
の情報をアップしました。
ご覧になっていただければ幸いです。
今回はタイトルのとおり、映画監督岡本喜八についての本。
でもうちで出すものですから、単なる映画評論ではありません。
執筆者は社会学者。
切り口は戦争。
喜八には、『日本でいちばん長い日』『独立愚連隊』『沖縄決戦』『肉弾』などなど、有名な戦争映画が多くあります。
庵野秀明が崇拝していることでも有名で、エヴァの使徒の波長パターン「BLOOD TYPE:BLUE」は、『ブルークリスマス』の英語タイトルからとったものです。
『シン・ゴジラ』に顔写真で登場するのも喜八です。
書名は、喜八の『近頃なぜかチャールストン』からいただきました。
直接的な戦争でなくとも、いまの状況は総力戦の銃後社会にかなり似ているのではないかと思っています。
あるいはこういうときに権力者・指導者がどう振舞うかも、喜八が描き続けてきたことです。
もちろん、戦争はいまこの国で喫緊の問題ではないだけで、世界中で常にそこにある恐怖です。
むしろ、プライオリティが高くないとされるときにこそ、権力者がどさくさ紛れに何をしでかそうとするか、注視する必要があります。
喜八は戦争映画を多く撮りましたが、銃弾の飛び交う戦闘を描く場面は意外と少ないように思います。喜八が描き続けた「戦争状態」とは、もっと日常とシームレスにつながっているようなものでした。
そのような思いを込めての、「近頃なぜか~」です。
サブタイトルは、普通なら「反戦の思想、娯楽の技法」とするかもしれませんが、編者の山本先生と相談して、あえて逆に組み合わせました。
喜八は戦争中、爆撃を受けた友だちが目の前でバラバラに飛び散って死んだ経験から、すべてを喜劇的にやり過ごす視線を獲得し、その痛切かつシニカルな視点が、のちの映画制作に大きく影響します。
そして喜八は絶対的に戦争反対の立場をとりますが、とはいえ反戦思想であれ何であれ、「思想」が簡単にひっくり返る胡乱なものであることも痛感していました。
そういう喜八の本のタイトルに、「反戦の思想、娯楽の技法」は素直すぎます。
喜八には愚直で生硬な「反戦思想」など面映ゆかったのかもしれません。
心の底で感じている真剣な思いを、どうやったら多くの人に伝えることができるか。
喜八はあえて娯楽を思想に掲げて、徹底的に面白いものを作り、そのなかに反戦を潜り込ませる技術を磨いたような気がしています。
ちなみに僕が一番好きな喜八作品は『肉弾』です。
故大林宣彦が絶賛し、演出の参考にしたのもよくわかります。
奇想天外で痛切な、ファンタジーとしての戦争映画の傑作です。
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