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  • 執筆者の写真みずき書林

ベッドの上の感情の起伏 8/19

8月19日(金)


昨夜は明け方まで一睡もできず。

6時頃うとうとして8時に起きる。

朝イチで採血。

ふらふらと歯を磨き顔を洗い、今日の内視鏡の処置の注意点を聞く。

ごはんがないと、1日の流れがのっぺりする。

朝食がわりに整腸剤や下痢止めを飲んでポカリスエットで流し込む。


ベッドに座ってひとりでぼーっとしていると、昨日の話が思い出される。

胃がんが大きくなっていたのは、やはり大きなショック。来るべきものが来つつある。

そんな気持ちのときに、大川さんと田中さんとLINEでやりとり。

スキンヘッドのロールモデルはユル・ブリンナーにする。

ユル・ブリンナーの名言に、

「頭に毛があろうと無かろうと肝心なのは頭の中身なんだ」

というのがあると知る(笑)。

ふたりとやりとりできて、気持ちが少し回復する。ありがたい。


12時、内視鏡の処置室へ。

頭に帽子を被り、指先、左頬、額、首にセンサーを取り付けられる。

広い部屋にはよくわからない機器が山ほどあって鈍い音を立てており、綺麗な空間にもかかわらず床には点々と血が散っている。たくさんのスタッフが防護服を着て動き回っている。正直、めちゃおっかないシチュエーションである。手術代にうつ伏せに寝かされ、口に麻酔をかけられてマウスピースを咥える。

胴体のほうをいろいろされているが、もはや顔を下げて見ることも声を出すこともできない。

そのうち麻酔が効いてくる。

気づいたら何もかも終わっていて、待機室のようなところで寝かされている。頭がぼーっとする。

足のほうにいる看護師さんふたりの会話がなんとなく聞こえてくる。どうやら胆管にステントを入れるという目的は達成できなかったらしい。がっかりしながら、覚悟していたんだから意気消沈するのはよせという声も聞こえる。

そのまままたうとうと眠る。

気づいたら病室に戻っている。

2時間は起きてはいけないと言われて、3時半まで眠る。

今日の処置をしてくださった先生が見えて、説明を受ける。やはり十二指腸が腫れすぎて内視鏡が通らず、胆管まで辿りつけなかったらしい。

週明けに別の方法でまたトライするとのこと。これで入院期間が伸びるのは嫌だなあ。


16時前に妻からLINE。これから差し入れを持って来てくれるとのこと。

面会ができないのは知っているが、せめてエレベーターホールのガラス越しに遠くから顔だけでも見られないかと看護師さんに訊ねてみたが、できないとのこと。

万一それで入院病棟にコロナが発生したりしたら大惨事だ。ちょっと顔見るだけみたいな細かい例外をいちいち了解していたらキリがなくなるというのもわかる。

クレーマー患者になるつもりはないし、ルールは守る。

でも、荷物は看護師さんに受け渡しを頼むだけで顔も見られないとわかった瞬間、ぼろぼろ泣けてくる。

胃がんは予想以上に悪化している。胆管にステントを入れる処置もうまくいかなかった。妻の顔も見られない。

雨の最後の一滴が堤防を決壊させるみたいに、この一年で一番泣く。ひとりでベッドに座って、がんの諸々を知ってから最大量の涙が流れて止まらない。


夕方、主治医の先生が月曜の処置のことなど今後の動きを説明してくださる。

ステロイドが効いているらしく、T-Bilの数値が下がれば、処置しないで帰れる可能性も出てきたとのこと。甘い希望は抱かないが、とはいえ気持ちが上向くのはいいことだ。経験的に言って、一番いい可能性は未来の希望には使わないほうがいい。だけど、現在の気分にはうまく利用したい。

説明してもらえると、安心感が変わる。


夜、テレビで『となりのトトロ』を観る。

何年振りだろう。

昨年のちょうど今ごろ、やはり入院先の病院でがんの告知を受けた夜も金曜ロードショーで『風立ちぬ』を観た。

どっちも物語の遠景に病気があるんだよな。

早く退院しておばけに会いたいわ。


今夜も眠れるかどうか。

明日は体調が許せばオンラインで参加したい研究会が午前と午後にひとつずつある。

もし参加できれば、また気持ちも前に向けるかもしれない。


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