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  • 執筆者の写真みずき書林

『主戦場』


ミキ・デザキ監督『主戦場』を観てきました。

内容については専用のサイトなどあるので、ここで紹介はしません。


スピード感と熱量に満ちた、とてもパワフルな作品でした。

圧倒されましたが、もし昨年の3月以前にこの映画を観ていたら、もっともっと激しく揺さぶられていたと思います。


という感想は徹頭徹尾、僕の個人的な事情であり、作品の内容とはまったく関係ありません。

この作品は、今だからこそ観る価値のある作品です。


個人的な事情とは何か。

かつて僕は、この作品に登場する何人かの人たちと関わりがありました。

直接に仕事を一緒にしたわけではありませんが、この映画でラスボス的に描かれる人物と関わりがある立場にあったことを、慙愧とともに告白しておきます(もっとも、先方は僕のことを憶えていないと思いますし、当時から僕を個人として認識していたかも疑問ですが)。

そしてその反対にいらっしゃるある方と、こちらは直接に本を出したことがあることも、いささかの誇りとともに記しておきます。



さて。

そういう個人的な事情も踏まえつつ。


とてもスリリングで、あっという間の2時間でした。

長い映画ですが、カット割りが素早く、目まぐるしく変わる画面と膨大なテキストを追いかけるだけで精いっぱいです。

極めてジャーナリスティックな作品です。

正義感と使命感と反骨心に溢れ、知ろうという動機に忠実で、知りえたことを伝えたいという思いに満ちています。

ある程度長い時間にわたって視覚と聴覚を独占できる、映画という表現方法ならではの、強い印象を残すことに成功しています。

5分のTVニュースやすぐに読める新聞・雑誌の記事に即時性と拡散性があるとすれば、映画には強い印象力と深い浸透度があります。

(そして余談ながら、本には映画に匹敵する浸透度と、いつもそばにあるという安心感・参照性の高さがあります)


「映画は風化しないジャーナリズム」という言葉を、最近耳にしました。

ここで扱われたことに代表される、近現代史にまつわる問題は、性急に解決を求める種類の問題ではないのだと思います(ここでは「解決」とは、対立する意見を双方が納得する共通理解に至らせる、という意味で用いています。念のため)。

風化させないために繰り返し問い続け、作品を作り続けることが、もしかしたら誰かを救いうるのかもしれない、と思いました。


(ここで「もしかしたら世界を変えうるのかもしれない」という表現を使うには、僕は個人的に過ぎます。ここではただ、「他の誰かを救いうるのかもしれない」というふうに言っておきます)



冒頭で触れた個人的な事情に戻れば、いまひとりでいることでできることを、あらためて考えてみたいなとも思うのです。

たいしたことはできないかもしれないけども。それでもなお。



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