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  • 執筆者の写真みずき書林

『街とその不確かな壁』

昨夜、村上春樹『街とその不確かな壁』読了。


僕の、おそらくは最後になるであろう、村上春樹の新作長編を読むという体験が終わった。

やはりなんやかんや言っても、僕にとって最重要な小説家だったと思う。

好みはわかれるし、批判の余地もたくさんある。一言で好きな作家と言っても、長い活動歴がある人だから、好きな時期、それほどでもない時期、好きな作品、そうでもない作品と、評価も自分のなかで別れる。

でも僕にとって、読み続けることがひとつの快楽である作家であることは間違いない。

物語を読むということの喜びや興奮を味わわせてくれる作家であることは確かだ。

ノーベル賞をとるかどうかなんて関係なく、とても力と魅力のある作家であるのだろう。


今回の『街とその不確かな壁』についても評価は分かれるだろう。

『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の「世界の終わり」のほう・ミーツ・ほんの少しの『ノルウェイの森』風味・プラス・『海辺のカフカ』といった世界観。ダイジェスト・オブ・村上春樹といった感じもしなくもない。

ただし、長い小説のなかで、パスタを作ることわずか1回、セックス描写は皆無、と書けば、近年の春樹の作品群と並んで、おおよその雰囲気は伝わるだろうか(笑)。


この作品を読んだことで、また過去のほかの長篇小説を再読してみようかと思わせてもくれた。

手始めにずっと再読していない『ノルウェイの森』あたりを読み直してみようかな。いま読み直すとどんなふうに感じるのだろうか。



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