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  • 執筆者の写真みずき書林

あれから17年も経ったのですね。


あのとき、僕は大学生で、杉並区下井草というところで一人暮らしをしていました。

ひとりで部屋にいて、テレビを見ていたのを憶えています(あの頃はテレビを持っていました)。

何を見ていたのかは忘れましたが、ドラマだかバラエティ番組だか、とにかく他愛もない日常的な番組を、見るともなしに見ていました。

するとそれが断ち切られるように終わり、いきなり臨時ニュースに切り替わりました。

煙を上げる高層ビルを背後に、NYに駐在しているアナウンサーが喋りはじめましたが、この時点では事故なのか事件なのか、まったく詳細はわかっていませんでした。

そうこうしているうちに、背後に映っているもうひとつのビルに、また飛行機が突っ込んだのが見えました。僕はテレビ越しとはいえ、2機目の突入をリアルタイムで見届けたのでした。

日本のスタジオにいるキャスターが「いまもう1機ぶつかりませんでしたか?」と訊き、現地のアナウンサーが「はい? え。そうですか?」と混乱していたのをよく覚えています。

多くの人と同様、この瞬間に僕も、これは事故ではないと確信しました。

当時、姉がNYに住んでいました。

すぐに実家に電話して――細かくは覚えていませんが、その夜のうちには姉の無事が確認できたのは記憶しています。

(当時住んでいた部屋から黒煙が見えたと、あとになって聞きました)


その日以降とうぶんの間は、不穏な微粒子みたいなものが空気中に満ちていました。ある意味では、あの日以降、空気感というか時代の肌ざわりは微妙に変わったままです。それはもう元には戻らないのでしょう。

姉の無事も確認でき、直接はかかわりのない東京に住んでいる立場ではありましたが、その後どこに行っても、東京の街全体が異様で緊迫した雰囲気に包まれていたことはよく覚えています。

(その張り詰めて不安に慄いているような空気は、それから10年後の3月11日以降、ふたたび街中を包み込むことになりました。そしてそこで変わった空気も、もう元には戻りません)


ごく稀に、自分が世界史的な事件や時代の転換点に立ち会ったな、と実感されることがあります。

普通に暮らしていたら、ある日突然何かが起こり、ことの重大さに呆然として、その瞬間から否応なく何かが変わってしまう日があります。

その日がいつだったのかは、その人の年齢やそのときいた場所などによって、それぞれに違います。

僕はそういう話を聞くのが好きで、いろんな人に自分が歴史的な現場に立ち会ったと感じた日はいつか訊いてみることがあります。

ある文芸誌の編集者は迷いなく、1960年6月15日国会と答えました(その人はそこにいたとのことでした)。

ある関西人は嬉々として、1985年4月17日、バース・掛布・岡田のホームラン3連発と言いました(それは世界史的な事件ではないだろう、いくらなんでも笑)。

玉音放送を挙げる人も、昭和天皇崩御と答える人も、ベルリンの壁やソ連邦崩壊のことを口にする人も、阪神淡路のことを言う人も、地下鉄サリンの一日ことを話しはじめる人もいました。


僕の世代にとっては、やはり911と311がそうだと答える人が多いのではないでしょうか。


(そういえば先日、アーサー・ビナードさんが、日にちがそのまま事件名になっている出来事は背景に胡乱なものが潜んでいる、と言っていたのを思い出しました)


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