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  • 執筆者の写真みずき書林

入院期間は10日ほどになります。

病室のベッドの頭のほうを上げて、スマホをフリックしながら、引き続き入院のことを書く。

ほかに書くことがないから。


入院期間は10日ほどになるとのこと。

2、3日程度だろうという予想よりはるかに長くなった。

いろんな所に不義理することになる。

明日、書けるだけメールを書かないと。


抗がん剤の副作用で、けっこうな腸炎が起きている。ほかにも黄疸など。

今日は腸に内視鏡を入れた。はじめて自分の腸壁を見た(怖いので睡眠剤をガチガチにキメてくださいとお願いしたのだが、なぜか効かずに途中覚醒した。まあ、尻の不快感たるや)。素人目には普通のピンク色に見えたけど、違うんだろうな。

明日は胃にカメラを入れる。

今度こそばっちり意識飛ばしてください。


内視鏡検査のために、事前に下剤の薬液を1リットル飲んでくださいと言われるが、とてもそんなに飲めない。途中で吐く。もう飲まなくても大丈夫といわれ、吐き気を堪えながら安堵する。

そのせいか、1日お腹がぐったりしてる。当然、終日お腹が下っていて苦しい。

でもまあ、ほかの体調はずいぶん良くなった。熱も下がったし。


病院は安心できる場所である。ましてここはがんセンター。何かあってもすぐに専門医が対応してくれる。その意味では、世界でもっとも安心できる場所だ。

同時に、病室でひとりでベッドに横になっていると、否応なく思考はネガティブにもなっていく。

いま安心であるがゆえに、先のことを考えてしまう。病院とはそういう場所なのだろう。

いずれ全滅する可能性が極めて高い撤退戦。

攻撃が激しくて救援が間に合わないかもしれない籠城戦。

そういうことを考えてしまう。


もちろん、今回はただの薬の副作用による不調だ。癌が広がって猛威をふるい始めたわけじゃない。今すぐどうこうなるとは思ってない。(いや、ほんとはちょっとだけ思わなくもない。無言の帰宅。なんてテロップが頭をよぎる。こういうシチュエーションになると、どうしても考えざるをえないんだ。考えても詮無いことなのに)


できるだけリラックスして身体を休めること。

いまはそれに専念するしかない。

それはわかってる。

仕事上でご迷惑やご心配をおかけしている皆さまには、本当に申し訳なく思います。

でも、もしかしたらもう二度と、以前のようにみんなと本を作ったり取材したり打ち合わせをしたりできないんじゃないかという恐怖がある。役に立つとか立たないとかで人間の価値は測れない。だけど、もしこの先、ただ苦痛に耐えてまわりに心配と迷惑をかけるだけになったとき、それでも生きていたいと思うんだろうか。


今夜は悲観的だ。

やれることはないのに、時間だけは有り余ってる。自動筆記みたいにこれを書いている。

とにかく、書きたいことはひとつだけだ。

入院期間はあと10日ほどになる。

このプラクティカルな情報だけ伝われば、あとの妄言は無視してください。



退院して元気になったら、


・シューアイスが食べたい(いまは絶食中。甘くて冷たくてほんのりジャンクなものに惹かれる。もちろん贅沢は言わない。シュークリームとアイス別々でもいい)


・ゼリーとかプリンも食べよう(リビングのソファに座って、クリームに見せびらかしながら食べたい。クリームにはおやつをあげる)


・蕎麦を手繰りたい(広尾のさ和長がいい。細くて清涼感のある蕎麦を、濃い目のつけ汁に少し潜らせて、さらっと。ネギやワサビなんかはなくてもいい。日本酒だってもうなくていい)


・みんなでごはんを食べに行きたい(歌舞伎町の青葉か、吉祥寺のCafe RUSSIA。みんなで行ければ、ぼくは干豆腐となにも乗せないプレーンな中華粥だけでも文句はない。キャベツの塩漬けとペリメニだけでも文句はない。紹興酒もウォッカも以下同文)


・ごはんを作りたい(最近体調が悪くて妻に作ってもらってばかりだったから。気持ち的に何が作れるだろう。出汁をたっぷり使っただし巻き卵。トーストしたバゲットにチーズをたっぷりすりおろして、その上にセロリやトマト、玉ねぎ、ズッキーニなど細かく刻んだ野菜をくたくたになるまでコンソメで煮込んでかけたスープ。上に卵を落としてもいい。ともにほんのり温かいくらいの提供温度で)



ああ、こういうこと書いてると少し元気になってきた。

書いてる間に、いくつか嬉しいメッセージもいただいた。

じゃあ前半部の暗いテキストは削除したほうが心配をかけないかもしれない。でも、こういうのも日々の記録だから消さないで残します。


気持ちは刻々と変わるから、あまり心配しないで。

乗り切ります。


のほほん顔。クリームに会いたい。

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