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  • 執筆者の写真みずき書林

半年が経過


3番目の、いまのところ最後の入院から半年が経ちました。

退院したのが昨年の12月頭。

そのときは非常に具合が悪く、実際に入院中は、妻は「いい話じゃありません」と主治医の先生に呼ばれて、もしかしたらこのまま退院できないかもと言われました。

退院してからはめきめき回復していくのですが、それでもしばらくは体調不良に悩まされました。


その頃は仕事を続けていくのはもう無理だと思い、会社を縮小化する方向で動きました。

具体的には代表取締役を妻に変更してもらい、出版部門をクローズして、在庫管理部門だけを当面残す方向に舵を切りました。

また正式な遺言状を制作し、僕が死んだあとも不要な事務的な心配をかけないようしました。


そんなことをしているうちに、しかし僕は徐々に回復していきました。

この頃、何人かに「奇跡的」ということばを使って祝福されたのですが、つい数カ月前に死にかけていたとは思えないほど、僕はめきめきと回復していくことになりました。


ほんの少量ですが、口からものを食べることができるようになりました。

酸素吸入器、トイレの手すり、車椅子などなど、自宅介護用にレンタルしていたさまざまな器具はもう使わなくてよいと判断できるようになり、少しずつ返却していきました。

起き上がって活動できる時間も徐々に長くなっていき、いまでは夕方のクリームの散歩に1時間ほど出ることもできるようになっています。

出版活動も再開しました。


すべては在宅医療に携わる医師・看護師の皆様のおかげです。

病院を離れて在宅で療養するときに一番不安になるのは、病院ほど手厚く看護が受けられるか、という点です。

自宅には戻りたいけど、日々のケアには心配がある。

そんな不安や心配を払拭してくださったのが、在宅看護の主治医の先生と看護師の皆様です。病院にいたときと比べて何ら遜色のない、むしろ顔が見えるぶんより丁寧なケアをして下さることに感謝します。


半年間。

過ぎてしまえばあっという間でしたが、それは病とともに生きている僕のような人間にとっては、実に長い期間なのです。半年あれば、状況はすっかり変わり得ます。

この間に死んでしまっていてもおかしくなかったのですから。


たとえば今から半年後に自分がどうなっているのか、まるで想像もつきません。

いまは具合も比較的落ち着いています。腹膜炎など、死のトリガーとなりうる症状もまるで見当たらず、いまのところすぐに死んでしまう兆候はありません。もしかしたら半年後もいまと同じように、ある程度の小康をえながら生きているのかもしれません。

しかしその一方で、崩れるときはあっという間に崩れるのがこの病気の怖さでもあるようです。いまから半年後というと11月。告知から2年以上を生きたことになります。

そのような長生きができるものなのか、まったくわかりません。

半年後には、僕はもうこの世にいない可能性も少なからずあります。


でも、この半年間の僥倖のような日々を含めて、これまでの年月があったからこそ、僕に不満はありません。

もちろん、これでもう十分と言えるほど達観はできません。できることならもっと長生きしてみたい。でも仮に明日体調が急変してそのまま死んでしまうとしても、なんとか受け入れられる気がするのです。

……いやどうだろう。やっぱり未練が残るかな。無念という思いが残るかな。

でも少なくとも、受け入れることはできると思う。もっとこうしたかった、あれもしたかったという思いに苛まれながらも、それでもこの生と死を受け入れることはできると思うのです。

この半年間で、そんなふうに思えるようになりました。


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