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  • 執筆者の写真みずき書林

四姉妹ふたたび


先に四姉妹物について書きましたが、日本にはもうひとつ、向田邦子『阿修羅のごとく』という名作もありました。

向田邦子という作家は、小説・脚本・エッセイまで、主要作品はほぼ読んでいるはずですが、この人はほんとに人間関係を描くのが上手ですね。その視線は暖かいのだけど残酷で、的確過ぎて容赦がなくて、もしこんな観察眼の人が近くにいたら、、ちょっと怖いような気がします。


『阿修羅のごとく』は四姉妹もののなかでも年齢設定は一番高めでしょうか。

長女はすでに伴侶と死別していて、次女は既婚、三女と四女は作中で結婚することになります。

そして言うまでもなく、だからといってみんな幸せになりましたとさ。という結末ではありません。


ここでも、〈しっかり者で折り目正しい長女、中心的な話者になる次女、控えめでおしとやかな三女、元気でませた四女〉という基本構造はわりと踏襲されています。しかし、全員がそれぞれに家庭や人間関係の問題を抱えていて、中心になって姉妹のまとめ役としてバランスをとる存在がいません。全員が均等にトラブルと心配の種をもっていて、互いに支えあいながらも、それぞれの悩みのなかに順番に姉妹たちを巻き込んでいきます。

おそらく、連続もののテレビドラマという尺の長い表現形式だからでしょう。


四姉妹ものは、必然的に家族や家庭を描くことになり、そのときどきの社会のなかの女性のあり方を表現することになります。

よって、19世紀アメリカの『若草物語』、昭和初期の関西を描く『細雪』、70年代東京の『阿修羅のごとく』、現代の鎌倉が舞台の『海街diary』。というふうに並べて比較してみると、風俗史的にもなかなか面白いと思います。

(しかしこうして並べてみると、ひとりだけ男性作家なのに四姉妹ものの名作を描いている谷崎の怪物性が浮き彫りになります)



なお、僕はここのところ妙に四姉妹ものにこだわるのは、もしかしたら深層心理に自社の4点の刊行物が念頭にあるのかもしれない(笑)、といまふと思いました。

……おそらくこの無意識の解釈は正しくありません。

いくらなんでも強引すぎます。単なる偶然の一致にすぎないでしょう。

しかし面白いからちょっとだけ性格を描写してみると(あくまで冗談です)、


〈みずきの四姉妹〉

長女『民族曼陀羅 中國大陸』:A4判フルカラー=一番派手好きで豪快。でも実は一番庶民的。

次女『戦争映画の社会学』:クレバーでクール。しかし意外と新奇なものを好む。

三女『秘蔵写真でたどるアジア太平洋戦争』:ビジュアルとテキスト=外見と内面のバランスがいい。穏やかだが、言うべきことは言う。

四女『マーシャル、父の戦場』:関連映画があったり著名人が参加していたり、一番社交的で活発。でも一番欲張り。


……意外と四姉妹もののセオリーに則っているのか、どうなのか。

まあ、全員「根が超真面目」という点は共通です。


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