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  • 執筆者の写真みずき書林

飛び石みたいな話


昨夜、早坂暁先生にからめて大林宣彦監督のことをちょっとだけ書いたら、今日のYahoo!ニュースに、「女性自身」からの引用で大林監督の談話取材が載っていました。


その記事によると、奥様の恭子さんの最初の記憶は、東京大空襲の焼け野原だったとのことです。

「その贈呈式で彼女がいいスピーチをしてくれてね。『私の記憶は7歳のとき、東京大空襲の焼け野原から始まっています。すべてが焼かれ、写真1枚残っていない。昔の記憶も残っていない。戦争を二度と起こさないために、何か役に立てることはないか。そんなときに映画と出合い、それをこれまでずっとやってきました……』」



関係があるようなないような話を継ぎますが、今年の5月に大林監督に取材したときに、4時間近い取材のなかで、以下のようなことを仰っていました。


大林宣彦:うちの妻が大館ですから。羽生といいますが、おじさんが一人、名前が違うんです。

なぜ名前が違うのかと思ったら、戊辰戦争で敵の武士と一騎打ちで倒した。自分が切り捨てた敵の武士が死ぬ間際に、自分には一人娘がいると。あの娘のことだけが心配だと。生きている君がなんとか助けてやって欲しいと言って死んだ。それを遺言と受けとめてその武士の名前を名乗って、その娘さんと結婚して、今の実家があるというね。だから、日本の歴史の中でそういうことが全部、生きてきているんです。うちの恭子さんには、戊辰戦争で勝った里と負けた里の両方の親戚がいるけど、みんな仲がいいのよと。

そんなことがあるので、是か非かで、敵か味方かで、あるいは戦争か平和かで分けるのではなくて、そういうことの中で生きている人間自体を考えることが、本当の平和を手繰りよせる力にもなると。



さらにつながるようなつながらないような話題を継ぎますが、早坂先生も大林監督同様、病を飼いならしながら88歳まで生きられた方でした。

彼の原体験のひとつに、海軍幼年学校から郷里の松山に向かう帰途、8月6日の数日後に電車が広島駅に停車したときの景色があります。

先生と同級生たちは、一面の焼け野原になった広島駅で、一晩過ごしたそうです。

ちょうど雨上がりだったその晩、早坂先生は街のいたるところに燐を見たといいます。いわゆる、鬼火というやつです。黒こげの焼け野原のあちこちに、青白く小さな炎が燃えているのをたしかに見たと言います。

「戦後になって、ほかの誰に言っても信じてもらえないけど、あのときに一緒にいた仲間たちは、みんな見た。あちこちの地面から、ポッ、ポっと青白い火が見えた。あれは世界の終わりの風景だと思った」

早坂先生は、いろんなところに書き、またしばしば喋っていました。



なおまた、今年の4月に82歳で亡くなった高畑勲さんは、ある書籍の中で、当時住んでいた岡山の空襲についてきわめて詳細な思い出を述べた後に、

「玉音放送を聞いて、ああ戦争に負けたんだということは、すぐにわかりました。(中略)ぼくは悲しくもなんともなかったんです。だって負けたらどうなるのかとか、状況を全然つかめていなかったから。だめな子どもですね。想像力が働かなかった」

と述べています。



すべて関りがあるようなないような、飛び石みたいな話ですが。



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