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  • 執筆者の写真みずき書林

自営・自衛としての自社販売サイト


本日、新刊が出来上がりました。

製本所から本が届いた瞬間の、喜びと不安がないまぜになったどきどき感。 いつもだったら、この不安は「誤植やミスがあったらどうしよう」というものです。 でも今回の不安は、少し質が異なります。 いま、全国の書店は休業しているところがたくさんあります。 当然ながら、人が集まる都市部の大型書店ほど、閉じている店が多くなっています。 今回刊行する『マハーバーラタ、聖性と戦闘と豊穣』は、緊急事態宣言が出るよりも前に営業を始め、全国の書店さんから注文を募りました。 そのときに注文をくださった書店でも、いまは休業している場合もたくさんあります。 当然ながら、そういうお店には出荷を中止しています。再開してからあらためて出荷することになりますが、それがいつになるかはわかりません。 つまり、事前注文の数よりも大幅に少ない数しか、市場に出回らないことになっています。 いっぽう、ネット書店の状況はどうでしょうか。 自宅にいて接触を避ける観点から、ネット注文は今まで以上に活用されるようになるでしょう。 ただし、たとえばAmazonは本以外も扱っていますが、いまは生活用品を重点的に在庫するように切り替えていて、書籍は補充制限をかけはじめています。 既刊は在庫なしになっても簡単には復活しなくなるかもしれませんし、新刊も十分な数が入るかどうかは不透明です。 この点は出版社同士の会話ではかなり話題になっています。 そして上記のような状況に加えて、言うまでもなく、刊行後のイベントは不可能です。 この本がでたらトークイベントなどやりたかったのですが、いまはそんなことはとても企画できません。 このような状況ですから、すべて致し方ないことです。 どの業界もそうですが、いまはそういう状態として耐えなければなりません。 頭ではわかっています。 そのためにできることをやってサヴァイブしないといけないという気持ちも強くあります。 それでも、かつてない危機感と焦燥感があります。 もちろんそれは僕だけに限った話ではなく、たとえ自宅でひとりで働いていても、その不穏で不安な空気はひしひしと感じられます。 では僕は何ができるか。 書店も厳しく、ネットも充分ではないとするならば、自社サイトで自営・自衛策を講じるしかありません。 もちろん、書店さんや大手ネット書店に比べれば、微々たる伝播力しかありませんが、しかしいま実質的には、それだけが出版社が持ちうる確実なチャンネルなのです。 小社では、1000円以上の購入で送料を無料にしています。 またサイトで買ってくださった方には「みずき書林通信」というフリーペーパーを同封して、せめて〈顔が見える〉販路になりたいと思っています。 時間と技術の許す範囲で特設サイトの構築に力を注いでいるのも、なんとか本や著者や出版社の〈顔が見える〉ようにしたいと思っているからです。 送料無料については、賛否両論があります。 つまり、それは書店さんで売れるかもしれない部数を版元だけが喰うことになるわけです。 (詳述は避けますが、とくに小規模の書店が本を無料配送するのは実質不可能です。それをやると、ほとんどの場合、書店さんの持ち出しになります。世間では送料無料は当たり前のサービスのように受け止められていますが、、実際には大手か、もしくはメーカーである出版社だからこそできる方法なのです) しかし、書店であれ版元であれ、読者ベースで考えて、なんとか可能なサービスを試みないといけません。 ・送料無料で付加価値を ・フリーペーパや特設サイトで少しでも楽しめるように そしてなによりも、少なくとも、 ・確実に本が手に入る ということを目指したいと思います。 『いかアサ』のときも『この世の景色』のときも、いろいろ失敗がありました。 それを踏まえて、なんとか自社サイトでの販売をスタートさせたのですが、それがまさか、蜘蛛の糸みたいになろうとは(「命綱」と呼べるほど太くもないし売り上げもありません。まさに本を送りだすための「か細い糸」です)。 「新刊を世に出すのは、子どもを旅立たせるようなもの」というよく言われる喩えがあります。 この喩えが合っているのかどうなのかわかりません。「腹を痛めた」というよりは「懐を痛めた」という感じかもしれません。でも「手塩にかけた」のは同じです。 少なくとも出版社としては、何か大事なものを送り出す気持ちになるのは確かです。何冊作っても、それは変わりません。 正直に書くと、ひどく心細い。 どうか、この時期に送り出す本たちが、行き場所を得られますように。

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