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  • 執筆者の写真みずき書林

『マーシャル、父の戦場』記事掲載 11/25東京新聞


編者の大川史織さんのインタビュー記事が、本日の東京新聞朝刊「書く人」欄に掲載されました!


冒頭に「類書を見つけるのが難しい一冊」と書いていただいていますが、おそらくその通りだと思います。

影響を受けた本は何冊かありますし、編集中に意識していた作品も、本だけに限らず映画や音楽などいくつかあります。

しかし、類書と呼べるものはあまりないと思います。

僕は編集者なのであまり手前味噌なことは書くべきではないかもしれませんが、とはいえプライベートなバックヤードであるこの場では、多少の思い入れ(や思い込み)を書くのは許されるでしょう。


出版元である僕と本書の編者に共通点が何かあるとすれば、おそらく〈欲張り〉ということではないかと思います。

編者と編集担当者が良くも悪くも欲張りであった結果、歯止めが利かなくなった(笑)本書は、20名以上の執筆者が参加し、400頁を超えるボリュームを持つことになりました。

僕は「はじめに」は書き直してもらいましたし、各章冒頭のテキストも何度か没にしました。執筆者のテキストへの細かい赤入れは、相当な量を提案している部分もあります。

しかし、取材や執筆の追加や、日記翻刻に付す資料などについて提案された際には、ほとんど異を唱えなかったと思います。

それはそういった提案が妥当なものだったからでもありますし、そのような資料群や執筆陣に支えられることでしか、餓死した一兵卒の未公開日記という〈弱い〉資料が広く遠くまで届くことはないと思っていたからでもあります。

26名の執筆陣の力が添えられて、佐藤冨五郎さんの日記は、ふさわしい飛翔力を持ちえたと信じています。


もちろん、そのような本ですから、さらっと読めるものではありません。

テキスト量は多く、立脚点と視点は目まぐるしく変わります。

最初から最後まで単線的に読まれることは狙っていません。むしろ時代や場所をジャンプしながら複眼的に読んでほしいと意図して目次構成をしています。

目的地まで最短距離で行く直行便のようにではなく、何度も乗り継ぎをしながら、アイランドホッピングのように読んでほしい本です。

編集作業の途上、僕は微苦笑とともに編者を〈欲張り〉と評したものですが、その欲張りさが結果的には本をいい場所に導いていくだろうとも思っていました。

そして意識はしていませんでしたが、結局は僕自身も同じ程度に欲張りだったのかもしれません。

可能な限り欲張った、てんこ盛りな本です。

時間をかけて、じっくりと取り組んでいただければと願っています。



というわけで、この本には類書はありません。

類したものがあるとすれば、それは編者である大川さんが作った映画になります。

本書の姉妹は本ではなく、違った表現形式で異なった内容を描写しながら、お互いに補完しあい助け合う関係にある映画にあります。



大川さんが本書に先んじて完成させた映画『タリナイ』は、アップリンク渋谷で、今月末まで公開中です。

当初は2週間の公開予定だったのが、いつのまにか2カ月のロングランとなっています。


毎回大川さんのアフタートークがあり、

28日(水)は本書にも寄稿している竹峰誠一郎先生がゲストです。

29日(木)は共同通信の所澤新一郎氏。

最終日となる30日(金)は日記研究者の明治学院の田中祐介さんとの対談です。

田中さんとは僕も前職からお付き合いがあり、9月末に『タリナイ』が公開されたばかりのころに、ふたりして映画を観たあとに渋谷で呑んだものです(笑)。あれから2カ月ばかりが経ち、田中さんが大トリのゲストで登壇することになるとは、縁とは奇なものです。


そして翌日の12月1日(土)からは、横浜シネマリンで公開開始となります。


アップリンク、シネマリンともに、書籍を持参することで鑑賞料金が300円引きになります。

ぜひ書籍を持って劇場にお運び下さい。


ともにシンプルならざる構造を持つ映画と本です。

それぞれの持っている複雑な表情を感じていただきながら、そのふたつがシンプルな姉妹関係にあることも楽しんでいただければ。


11/25 東京新聞朝刊


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