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  • 執筆者の写真みずき書林

取材の文字起こし


この一週間、ずっとインタビューの文字起こしをしています。

授業が始まったり、業界の会合に出たり、新刊の見本ができてきたり、新しく到着した原稿を楽しく読んだり、いろんなことがありましたが、その隙間を縫うようにして、一番底のレイヤーでは、一週間前に取材した2時間ほどの音声をこつこつと文字に起こしていました。


こういうのは専門の業者にお金を払って依頼すれば、同じくらいの時間で、そっくり同じものが出来上がります。

でも、今回はなんとなくそうしたくない。コストカットという意味だけでなく、ほんとに聞きたい話だし、これから先の編集を考えると、文字起こしも自分でゼロからやるのが、正解なような気がしています。


それが今日ちょうど、最後まで行きつきました。

これから2万5000字くらいになったその起こし原稿を、8000字くらいまでブラッシュアップしないといけません。まだまだ作業は続きます。

でも、素材はすべて、ひとまず言語化されました。


今回は、さる漫画家さんへの取材でした。

インタビューの現場では気づきませんでしたが、音声を聞きながら文字起こしをしていると、その漫画家さんが、いかに考えこみ、言いよどみ、適切なことばを探しながら喋ってくださっていたかが、とてもよくわかります。

漫画という、画とことばで構成され、コマ割りで区切りを付けながら進めていく表現を生業にしている人が、自分の口から出ていくその場限りのことばだけで、自分のやっていることを言い表していくということに――もちろん相手がだれであれ、インタビューというのはそういうものですが――とても丁寧に、慎重に向き合っていただいていることがわかります。


出来上がった原稿では、その言いよどみや言い換え、より適切なことばを探すために考え込んだ時間や、みんなで笑った瞬間などは、うまく表現できないかもしれません。

「……」や「(笑)」では表せない、その場の空気感があります。そしてそれは、ある強烈な体験をした経験者に取材したその漫画家さん自身が言っていたことでもありました。

〈事前に調べているので、どんな話をされるかはわかっている。ほとんどの場合、話の内容そのものは知っていることのほうが多い。でもその知っていることを伝えてくるその場の口調や雰囲気は、会ってみてはじめてわかる〉

そんなお話をしてくださいました。



文字起こしをブラッシュアップしていく作業は、ちょっと怖いものです。

自分の考えや感覚で文字を削っていくわけですが、その結果、その取材対象が大事にしていたことや、大切にしていたニュアンスを取りこぼしているのではないかという恐怖があります。

彼らの語ったことがとても興味深いものであっただけに、自分にそれをまとめる力量があるのか、恐れが生じます。


でもたぶん、その場にいて直接話を聞いた者として、それができるのは我々しかいない。

がんばりましょう。



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