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  • 執筆者の写真みずき書林

〈弱国史〉概論―4/4スタート地点とゴール

更新日:2020年1月9日


たとえば我々は、ブルガリアについてヨーグルト以外の何を知っているでしょうか。 たとえばモーリタニアでもセントビンセント及びグレナディーン諸島でもいい。 あるいはシリアでもケニアでもアフガニスタンでもコンゴでも。 あなたがそれらの国について何か知っていたら、ぜひ教えてほしい。

そういうひとつひとつの国をしっかり知っていて、そこの人びととしっかり結びついている日本人がいるはずなのです。 そういった人たちの話を聞くことから、すべては始まりそうです。

いまとある大学でやっている授業で、マーシャル諸島共和国を扱った本と映画をとりあげた際に、学生からの感想のひとつにこんなものがありました。 「マーシャルのことを今日初めて知ったが、日本と非常に親密な関係にあることが分かった。人生を変える何か、理論では説明できない動機が、自分にも欲しい」


その講義で話してもらった人がマーシャルで映画を撮った動機は、 「深いつながりがありながら知られていなかったこの国と人びとについて、もっといろんな人と話がしたかった」 からだったといいます。

手前味噌ながら、サイトに挙げている小社のやりたいことは、 「人と人との対話を生みだすような本を作ること」です。



以上、日本との関係が弱い(とされている)国を扱う架空の企画「弱国史」では、


・語れることの少ない、日本との関係を見つけ直す ・政治的・経済的・軍事的な関係以外に注目する


という考え方によって、教科書的な強国史の死角をつきます。


それは垂直的には、いままで自明視してきた強国史を相対化することになります。 いくつかの強国の関係史だけを知ることが、世界史を学ぶということではないはずです。 そしてそのように歴史をとらえ直そうとすることは、水平的には、隣国との関係を相対化することにもつながるでしょう。


あえてごく単純化して言ってしまえば、アメリカと中国とロシアと韓国との関係だけが国際関係ではないのです。もちろん、そういった隣人たちとの関係は重要です。 でも、世界はそれよりももう少しだけ広いことは、あらためて知っておいてもいい。


そして「日本との関係が弱い(とされている)国」を知るために最も有効な方法として、弱国史は、国ではなく人を前景化させることになるでしょう。 弱国史という仮想のジャンルは、〈聞く〉ことでスタートするでしょう。 そして、(とされている)という部分をひとつひとつ外していき、「ほんとうは日本との関係が深い国」と認識を新たにすること、そこにも素敵な隣人たちがいると知ることが、ひとつのゴールになるでしょう。



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