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  • 執筆者の写真みずき書林

文士の料理

むかし世田谷文学館で買った『文士料理入門』(狩野かおり・狩野俊著、角川書店、2010年)という本がありまして、こういう文学×ごはん本は読むのも作るのも好きです。



宇野千代の、穴子のバター焼き


池波正太郎の、茄子の丸煮



向田邦子の、大根と豚肉のべっこう煮



いま背中にある本棚を振り向くと、向田邦子の『夜中の薔薇』が目についたのでぱっと開いたら、最後のごはんについての文章が出てきました。

「これで命がおしまいということになったとき、何を食べるか、という話題である」

向田邦子は、


・煎茶に小梅で口をサッパリさせる

・パリッと炊き上がったごはんにおみをつけ

・納豆。海苔。梅干し。少し浅いかな、というくらいの漬物。

・濃く入れたほうじ茶


とひとまず挙げたうえで、「やはり心が残りそうである」と、卵かけごはんやカレーライスや、昨夜の残りの塩鮭やかき揚げを延々と思い出したりしています。

僕も明日死ぬとしたら最後の晩餐はどうしようかと、しばしば考えます。

いまのところ、


・出汁たっぷりでふわっと巻いた出汁巻き卵

・冷ややっこ、薬味はしょうがと叩いた梅干し

・細うちのせいろ蕎麦を一枚

・ビールを大きめのグラスに一杯+冷酒を二合ばかり。ともに程よく冷えていれば銘柄問わず。


という感じですが、やはり心が残りそうなので、棺の中は花代わりに、バジルとプチトマトとモッツァレラチーズを敷き詰めて、マルゲリータっぽく焼き上げてほしいと思っています。


そんなことをぼんやり考えながら文士料理を並べて、麦酒・日本酒・焼酎などを少々いただくのは、ささやかながら確かな喜びですね。


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