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  • 執筆者の写真みずき書林

次の本――早坂暁先生のエッセイ集(上)


次の書籍として、早坂暁先生のエッセイ集を出します。

いま準備をしていて、刊行は9月頃になるでしょうか。


先生とはじめて会ったのは、2004年。

当時担当していた企画でインタビューしたのでした。

もっとも、それより前に先生のお名前は知っていました。

子どものころ、中国残留孤児のドラマを観たような記憶がありますが、思えばあれは早坂先生の脚本だったかもしれません。

学生時代には『ダウンタウン・ヒーローズ』を読んで、そのウソかホントかわからない絶妙な語り口が印象に残っていました。主人公はどうやら早坂暁その人のようです。しかし、ここに描かれたことは、あまりにも波乱万丈で、面白すぎる。主人公の背中には、恋人のために彫った、肌が熱を帯びるときだけ浮き上がるという刺青があります。

ひょっとして、先生の背中にも、刺青があるのでしょうか?


それ以来、先生が亡くなる2017年末まで、お付き合いは続きました。

先生との思い出、最後の頃のことは、以前に書いたことがあります。



今回刊行するのは、先生のエッセイの集大成です。

ベストエッセイ・オブ・早坂暁です(書名は未定)。



脚本家・小説家として活躍された先生ですが、エッセイもとても上手でした。

エッセイの代表作に『公園通りの猫たち』『花へんろ風信帖』などがあります。

そこからよりすぐった35編を収録予定です。


今回はOCRを部分的に援用しつつも、元原稿から僕がぜんぶ入力を行っています。

一文ずつ自分の手で入力していくと、先生の文章のうまさが実感されます。

難しいことばをつかうわけではありません。普通のことばづかいで、情景がすっきりと頭に浮かんできます。

会話のやりとりが、簡潔でありながら見事に流れを作り出しています。

そして短いエッセイのなかにも、伏線をはったり、別々に進むふたつの話を最後で結びつけたり、シナリオライターならではの展開の芸があります。

その文章がしばしばエッセイの賞をとったり、教科書に載ったりしたのもうなずけます。

誰にでも読める、でも誰にでも書けるわけではない文章です。



昭和に大活躍した人ですから、いまの人は、先生の映像作品にはあまり触れていないかもしれません。

でも、そういう人にもぜひ先生の文章に触れてほしいなと思います。

つづく

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人生最初で最後になるであろう、自分の本を作っています。 これまで編集者として何冊の本を作ってきたか、前職まで含めると数えることもできません。膨大な数の本を編んできました。 でも自分が著者になるのは今回がはじめての体験です。 そしてほぼ間違いなく、最後の体験になります。 いまは企画書をブラッシュアップしながら、とにかくこれまで書いたブログをすべて読み返しているところ。 ざっとななめ読みして、使えそう

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